体重落とすだけじゃダメになってきました。



ある日突然、ソファで寛いでいると佐助が私に問い掛けた。

「ねぇ、叶ちゃん。俺様に隠してること、無い?」

「・・・・・・は?」

思わず間抜けな声を出した。ぽかんとした間抜け面だって披露した。おい、佐助くんよ。いい歳した私にこんな顔させないでと言いたい。そんな私の反応を見て、佐助が詰問するように詰め寄ってくる。

「あ、やっぱあるの?」

「はぁぁ?あるわけないじゃん」

「嘘じゃ、ない?」

「嘘なわけ無いでしょ!大体、私が佐助に嘘が吐けるなら、甲賀流忍術免許皆伝しちゃうでしょ」

「・・・確かに」

「でしょーが。一体何なの?藪から棒に・・・」

私は佐助の言わんとする意図することが見えなくて、あらぬ疑いに憤慨した。大体家と仕事場の往復、休みはずっと一緒の日々に、何の疑いを持てるんだろうか?隠し事をしたくても、それを作る時間すら無いというもんだ。

「だって、最近家に帰って来てから、俺様のことあんまり構ってくれないでしょ?それってやっぱり俺様から心が・・・離・・・っ・・・」

どうやら言葉にするのも嫌なようで、佐助は顔を顰めて黙り込んだ。そしてじっとこちらを見つめてくる。その視線が痛い。私は軽くため息を吐いて、そして佐助の目を見て口を開いた。

「私、心の離れた人と一緒に居られるほど、器用じゃない。身体だけの関係とかも、私は受け入れられない。それは佐助が一番良く知ってるでしょ?」

努めて冷静にそう言葉にすると、向けられていた佐助の視線が緩んだ。

「・・・ごめん。何か俺様、アンタのことだけは調子狂っちまうんだよな・・・」

「ほんとに、うちの駄犬は」

しょんぼりとした佐助の姿は、耳の垂れた犬そのもので、安堵のため息にも似た吐息を吐くと、床に直接座っている佐助の頭に手を伸ばす。よしよしと撫でると、見えるはずの無い尻尾がピンと立つのが見えた気がした。それにしても、と佐助の言葉が気になって、頭を撫でながら、今度は私が問い掛けた。

「私、最近佐助のこと、そんなに心配されるほどほったらかしにしてる?」

「・・・最近冷たいような気がしたんだ。だって、抱き付こうとすると制止されるし、撫で撫でしようとすると手を叩かれるし、お話しようと思っても本読んじゃうし・・・」

「・・・そんだけ?」

「そんだけって・・・!俺様としてはもっと触れ合いたいわけなの。こうぎゅーって、ずーっと抱っこしてたいの。そんでちゅっちゅして、いっぱい撫でて・・・」

「はい、ストップ。佐助の欲望の告白は良いから!ってか、そんなん毎日毎日付き合ってられません。それに、そうはいっても、私いつもいつも拒否ってるわけじゃないじゃん。ちょっと都合が悪い時があるって話で・・・」

「・・・何?その都合って」

私の言葉に佐助は敏感に反応して、探るような目を向けてくる。その何でも見透かすような視線に、私は疚しくも無いのに冷や汗が出た。

「いや、その・・・別に知られて困ることじゃないんだけど・・・」

乙女の事情というもので、出来れば積極的には言いたくは無かったことなだけに、私の言葉が鈍る。佐助はそれに強く反応した。

「それって俺様が嫌がること?」

「え?うーん・・・、ちょっと?」

「・・・!まさかやっぱり杞憂じゃなくて、他の誰かに心変わり・・・したの!?」

「ち、違う!そんな訳ないよ!!さっきも否定したじゃん」

「じゃあ、何なのかはっきり言ってよ。俺様大抵のことは笑って許せるから」

そういう佐助の表情は、とても言葉通りには見えないくらい硬い。私は少しだけ気まずくて視線を彷徨わせながらも、これ以上揉めたくも無いし、渋々答えることにした。

「あー・・・、実は私・・・」

この時点で佐助はすごい真剣に私の言葉に耳を傾けている。そんなに深刻な顔をされてもちょっと恥ずかしい。

「最近ですね・・・2sほど痩せました」

「なーんだ、2s痩せただけ・・・って、は?2s痩せた!?」

「う、うん・・・」

これが言いたくなかった理由のひとつ。佐助は私が痩せることに強く否定的な態度を示す。しかもその後スペシャルメニューと称して、体重を戻すためにガッツリ食べさせられるから嫌なのだ。胃がもたれちゃう。

「え、何で痩せちゃったの?お家ではきちんと食べてるし、まだそんなに暑くなってないし」

この質問にも答えたくなかった。絶対怒られるのが分かっていて、ペラペラ話すわけがない。とはいえ、正直に言うしか、私に選択肢は残されていなかった。


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