※微?破廉恥です。一応鍵無しで・・・



「佐助、ヤバい・・・。私、何にもしたくない・・・」

時折私を襲う、無気力になる瞬間。何をしたいのか、何をしなくてはならないのか、何をしなくても良いのか、全てが分からなくなる。とりあえず、仕事には惰性で行くけれど、本当は休みたい。何にもしないでぼーっとしてたい。なのに同時に、その欲求に従うことに強い不安も感じる。時間を無駄にしてしまったら、何か取り返しがつかなくなるような。そんな漠然とした不安が込み上げる。

「どうした?会社で何かあった?そんな風には見えなかったけど・・・」

「うん、何も無いよ。ただ、何か燃え尽きてるような・・・。んー、空っぽなのに、何かを絞り出さないといけないって感じ?」

「何に煮詰まってんだろうね。俺様心配だよ、そんなアンタはさ。時折なるよな、無気力症候群なーんて言ってみるか?その靄のような焦燥感に突き動かされる感じ?」

「そう、焦燥感が合ってるかも・・・。そわそわする・・・、のに何もしたくない。助けて・・・佐助」

私は佐助の腕の中に逃げた。佐助は私を抱き留めて、少しきつめに抱きしめてくれる。まるで焦った私がどこかに行ってしまわないかのように。そして安心させるように。

「何にもしなくても大丈夫だよ。アンタに今必要なのは、何かすることよりむしろ休むことだよ」

佐助はそう言ってそっと頭を撫でてくれる。私はそれを目を閉じて感じた。私の心を慰める温もり。その優しい温もりに、私の口がいつもより緩んだ。

「そうかな?だっていつもやってること一日でも休むと、私・・・私・・・置いて行かれちゃう・・・!」

「何に置いていかれるって言うんだよ。何にも悪いことなんて起こりやしないよ」

「そんなこと、無いよ。ある日、突然、朝になったら昨日までの世界と一変してること、たくさんあったもの。もうあのゾッとする光景はイヤ。いつもと同じことしていれば大丈夫なの。だから変化はダメ。アレを回避できるなら、私は無理をしてでも頑張る。頑張らなきゃ・・・」

「叶ちゃん!」

私が不安に堪え切れなくなって、突き動かされるまま佐助の腕から逃れようともがくと、佐助は強い声で私の名を呼んだ。

「大丈夫、大丈夫だから。俺様が居るよ。何があっても、どんなアンタでも、俺様は愛してるから。絶対に変わらないから」

「絶対・・・絶対?絶対なんて・・・そんなもの無い。だから私は頑張って・・・頑張らなくちゃならなくて・・・。嫌だ、頑張りたくない。もう・・・、疲れた・・・」

私は突然子どもみたいにぽろぽろと泣きだした。佐助は初めて見る私の姿にきっと心底呆れているだろう。私の本質はとても脆い。それを誤魔化すために、普段は色々諦めて、そして受け入れて、流していっているだけだ。いざそのことに目を向けたなら、一気に現実を見つめて、許容オーバーになって砕けてしまう。それが分かっているのに、何故か私はその『現実』を時折覗き見てしまう。見つめる度に心がザッと冷えて。幸せな甘い夢が霧のように晴れてしまう。

「何にもしたくない。休みたい。誰にも頑張らなくて良いところで・・・。楽しみなんて要らない。だから悲しみも一緒に無くして」

「叶ちゃん。何でアンタそんなになるまで我慢するの。何で俺様に言ってくれなかったの?」

「だって・・・こんな弱い私は要らない。佐助にも見せたくなかったのに・・・ダメだね。不安なの。こんな私を見たら、佐助がどっか行っちゃう気がして・・・。誰も好きじゃない、こんな私。私・・・ね、皆に嫌われてるの。だから上手くやれないんだ」

「考えすぎだよ。誰も嫌ってやしないって。でも、もしもこの世界の人間が皆アンタに背を向けたとしても、俺様は嫌うはず無い。こんなに好きなんだ。形に出来るなら、見せてあげたいよ。俺様の気持ちが重すぎて、アンタがそれに怯えて逃げ出さないか、そっちの方が不安だよ」

佐助は私の髪に顔を埋め、そして指で髪を何度も梳かした。私は佐助の胸に顔を寄せて、その鼓動に耳を傾けた。ドクン、ドクン、ゆっくりと刻まれる心拍音。

「重たいくらいがちょうど良いの。重くて落としちゃいそうなくらいじゃないと、安心できない。ただ寄り添ってくれるだけじゃ嫌。私を蝕む程心を侵すほどが良いの」

「俺様も相当だけどさ・・・、アンタも相当だね?でも凹凸がぴったり。んふ、これも運命・・・ってやつか?」

佐助はベッドに蹲っていた私を横たえさせると、額に口づけを落とした。

「今日は夢も見られないくらい深い眠りをあげる。何にも考えられないように」

「うん、頂戴―――」

私は佐助の首に腕を回して、そして佐助の与える快感に身を委ねることにした。合わさる唇から言葉は出されないけれど、ただ吐息を交わすだけでそれ以上落ちていくことは無かった。頭を空っぽにして、佐助の舌を、指を、吐息を、ただ感じた。この行為に快感を得ること以上の意味なんて無くて、だから貪るように追い求めた。


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