![]() ![]() ![]() ソファで雑誌を片手に、読んでいるというよりは眺めてるといった方が正しい姿勢でダラダラとしていると、佐助が寄ってきて隣に腰を下ろす。 「ねぇ、叶ちゃん。動物の鳴き声は知ってる?」 「はぁ?知ってるに決まってるじゃないの」 私は呆れ気味に答える。さすがにこの質問は無い。私だって鳴き声くらい、知ってる。というか、佐助の聞きたいことの意図が見えなかった。 「じゃあ、犬は?」 そんな私の訝しむような様子はさて置かれ、佐助は満足そうに頷きながら続けて質問した。私も意図が分からないなりに、律儀に答える。 「ワンワン」 「猫は?」 「にゃあお」 「んふー、かーわーいーい!!んじゃ、人間は?」 佐助が私の返答に身を捩りながら、サラッと意味が分からない質問をする。 「人間!?人間は鳴かないわよ」 私はますます訳が分からないことを、と思いながら軽くため息を吐いた。 「何で?人間だって動物だろ?なら鳴き声があるはずだぜ」 「無いったら、無いの。人間は言葉を話すでしょ」 「ブブー、あります。俺様知ってるもん」 「ええぇ!?なら教えてよ。何て鳴くの?」 「知りたい?」 「知りたい!」 私は佐助に詰め寄りながら、勿体ぶられる答えをせがむ。 「なら教えてあげる。人間はねぇ・・・『さみしい』って鳴くんだよ」 「さみしい?そんな風に鳴かないし。って言うか、意味分かんない」 「そう?さみしい時に鳴くから、そうやって鳴いて呼ぶんだぜ。ほら、叶ちゃんも俺様に鳴いてみせて?」 「えぇ ![]() そう言って雑誌に視線を戻した。 「叶ちゃーん、冷たーい」 「別に冷たかない」 腰のあたりにしがみ付いてくる佐助に、しっしっと追い払う仕草をすると、むぅと拗ねた顔をしてじとっと上目遣いで見てきた。それでも無視し続けると、「おーい、俺様ものすんごくさみしいんですけどー」なんて小声で呟いてみせる。 「あー、もう!分かったわよ。はいはい、さみしん坊佐助君よ、私は一体どうしてあげたら良いの?」 「んふー、俺様に甘えて欲しいなーって」 「はいはい、『佐助くーん、さみしいな〜』って、ど?」 「ちょ、まさかの棒読みとか。だがしかし、負けない。さぁ、叶ちゃん。俺様に飛び込んでおいでっ」 佐助が真面目な顔して腕を広げて構えるので、苦笑しながらそこに身を預ける。佐助は私をぎゅっと抱きしめると、よしよしと頭を撫でてきた。 「お疲れ様、叶ちゃん」 繰り返し撫でられる感触が気持ち良い。その感触を堪能していると、ふと、もしかしてと思って、パッと身を起こして佐助の顔を覗き込んだ。 「ね、まさか私を癒そうとしてる?」 「だからそうだって言ってるじゃん」 「じゃなくて、本当は・・・分かってるんでしょう?」 「さぁて、何のこと?」 佐助は相変わらずにこにこして、私の頭を撫で続けてる。じーっと見ても、まったく佐助の気持ちは読めない。とんだ食わせ者だ。でも、私は確信している。根拠は無いけれど、佐助は全部分かってるんだって。全部分かった上で、こんな小芝居をしてみせているのだろう。私のために。軽く息を吐きながら、私はもう一度佐助の胸に身を預け直した。 「今日さ・・・嫌なことがあったんだよね」 「うん」 唐突に、ぽつん、ぽつんと途切れがちに今日あった嫌なことを話し出す。佐助は何も言わずに耳を傾けてくれているようだった。これまで、他人に自分の辛い気持ちを言うことなんて無かった。言っても共感はしてくれているんだろうけれど、同じ重さで捉えられていないと感じてしまって、余計に悲しくなったりして。何より、愚痴った相手が自分の知らないところで、面白おかしく別の誰かに話しているんじゃないかって思えてしまって・・・。そんな風に考える自分も嫌だし、疑心暗鬼に囚われるのも苦しかった。結局のところ、落ち込んだりすると、他人を心から信じられなくて、そんな風に疑うのも嫌で、自分の中でそっと噛み殺すしかなかった。それを今、私は口に出して話している。自分でも驚きながら、それでも話し続けた。 「今日は、大変な一日だったね。良く頑張りました」 話し終えた私に、佐助は額をこつんと合わせて優しく告げる。じわっと噛み殺したはずの思いが溢れて来て、それが涙に変わって零れだした。佐助は黙ってその涙を指の腹で拭ってくれる。やっぱり佐助は私に嫌なことあったことも、それをいつも黙って過ごしてることも、だけど別に平気なわけじゃないことも、全部分かっていた。 「佐助ってさ、凄いよね」 「んー?何が」 「さらっと手を差し伸べられるじゃない。私は出来ないから」 しばらく涙を零してしまうと、何だかいつもよりすっきりしている自分が居た。佐助の癒しが効果的だったらしい。 「そんなこと無いよ。叶ちゃんのが凄いよ」 「えー、何が?私、別にいつも佐助に何もしてないし、佐助の気持ちとか、汲みとってあげられて無いと思うよ?」 私が当惑した表情を浮かべると、佐助はふにゃっと眉を下げる。 「だから凄いんじゃないの。無意識に俺様を変えたでしょ?」 「私が、佐助を?」 「俺様に感情を持たせてくれたのは、誰?アンタでしょ、叶ちゃん。俺様がアンタにしてあげられるのは、癒すことくらい。だから目一杯甘えてよ。落ち込んだときとか」 「な?」と首を小さく傾げられて、私は思わず笑って「うん」と答えた。そして、私は佐助にベッタリとくっ付いて大好きな読書をすることにして、小説を手に取った。きっとこれからも言えない時があると思う。でも、佐助ならまた私に黙って手を差し伸べてくれるだろう。私は穏やかな気持ちになって、時間を過ごすことが出来た。 ―――ねぇ、心が元気になってくれたところで、俺様も癒してくれない? ―――ん?佐助も何かあったの? ―――うん、大変なことがっっ ―――え、何? ―――実は俺様・・・、ムスコさんが大変なことになってますっ ―――・・・・・・アンタね、いっぺん終わってこい! ―――ギャッ!・・・いったーい!ありえない!! ―――ありえないのは、アンタだからね!!何、おっ勃ててんの!? ―――ちょ、俺様の使い物にならなくなったら、アンタも困るでしょーがっ ―――ほんっとに馬鹿。馬鹿! 最後で良い話、ぶち壊した\(^o^)/ヤッチマッタ さーて、頑張りますか。もう少し作業以外のこと頑張りますおっと〜。あ、佐助さんならこの時間に起きて来るよね?あーあ、会いたいな〜。佐助さーん(´・ω・`) 今日は何だか作業が進まなかった日ですお。こんな日もあるかってな感じです。 * back * |