桜の話ー。



佐助に後片付けを任せて、私は部屋に戻って着替えをした。今日は少し歩くからと、パンツコーデを選ぶ。カバンも、小さな肩掛けタイプを選ぶ。しっかり用意を整えると、既に片付け終えて待っていた佐助とともに外へと出掛けた。

「暖かいねー。少し暑いくらいだわ」

「本当に。少し風も強いから、帽子が飛ばされないように気を付けてね」

「うん、わかっ・・・あっっ!」

佐助に注意された途端、帽子が風に乗って飛ばされた。くるくると回りながら、手の届かない場所へと飛ばされていく。

「まっかせて!」

佐助が風に乗って高く舞い上がってしまった帽子に向かって飛躍する。手を伸ばし、つばを掴むと一回転してきれいに着地した。その鮮やかな動きに私は圧倒された。

「すっごーい!」

「へへーん、俺様優秀な忍ですから」

そう言ってそっと私の頭に帽子を戻してくれた。佐助は本当に忍なんだと、こんな時に再確認する。「ありがと」とお礼を言うと、「どういたしまして」と帽子の上から頭を撫でられた。こうして見せる佐助の表情は甘くて、とても命のやり取りをしていたようには見えない。私は、きっとその手で何人もの命を奪ってきたであろう佐助の手を取り、しっかりと繋いで再び歩き出した。

「もう少し先に見せたいものがあるのよ」

目指す場所まではあと少し。いつもとは違う場所。

「あ、見えてきた!」

「どれどれ?あ――――」

佐助が息を飲んだのが分かった。らしくなく少し気を抜いた顔をして、私の見せたかったものを見ている。

「綺麗でしょ、ここの桜並木」

何百メートルも続く桜の道。ピンク色の花弁に上下左右、全て彩られている。

「うん、すごく・・・きれいだね。・・・懐かしいよ」

佐助は今、多分元の世界で見た桜の光景を重ねているに違いなかった。きっと向こうはもっと自然が豊かで、桜なんかももっとたくさんあって、それはそれは美しい光景だったに違いない。

「ありがとう、叶ちゃん」

「うん。去年は佐助、来たばっかりで私と口もあんまり利かない状態だったから、今年こそ一緒に見たかったんだよね」

「その節はごめんなさい」

「良いって。だって私だって見知らぬ土地に急に来たら混乱するもん」

そう言うと、佐助は眉を下げて笑いながら私を抱き寄せた。ぎゅうと抱きしめる腕の力が強くて、少しだけ苦しかった。

「佐助もさ、たまには我儘くらい言えば良いのに。『俺様は、旦那も大将もアンタもみんな欲しいです』って。『一緒に俺様の世界に帰りたい』って」

私はさっき佐助が飲みこんだ本当の願いを口に出した。きっと佐助は本当はそれを願ってる。私はそう確信している。

「言わない」

「何で?言っても良いんだよ。今すぐ叶わなくても、たまには駄々ぐらい捏ねて見せてよ」

「だってとりあえず今は戻る方法なんて分からないんだし、アンタが居てくれるから。だからそれで良い」

「意地っ張り」

「うっは、叶ちゃんには言われたくないぜ。俺様アンタの意地っ張り具合には間違いなく負けます」

「あー、あー、言っちゃう?へぇ、んじゃ私、気分を害したので今夜は佐助とは別々に寝ます」

「えええええ!!??ごめん、ごめんなさいってば!ほら謝るから、許してよ。今夜はせっかくながーくむふふな時間が取れる休日前日なのに〜。あんまりでしょう―がっ!」

「あんまりなのは佐助!その煩悩捨ててから桜を見てよ」

「俺様から煩悩取ったら俺様じゃ無くなっちゃうよ?それに、アンタも気持ちぃーことできなくなっ、あだっ!!痛ーい、何すんのさ!」

「もう、黙れ!こんな公共の場所であんた、何口走ってんの!!もー、知らない。佐助とは歩かない」

「叶ちゃーん、待って!もう言わないから」

佐助が私の手を取って、また横に並んで歩き出す。プイと横を向いて、佐助と視線を合わせないようにした。でも、手はしっかりと握ったままで。それに気付いた佐助が小さく笑って、私が向けている耳にちゅっと軽いキスをした。

「なっ・・・!」

「もう仲直りして一緒に歩こう?」

驚いて振り返れば、にこにこした佐助が仲直りを言いだして。桜の花弁がひらひらと、止めど無く舞い落ちる綺麗な景色の中に立つ佐助を見たら、私も仕方ないなって気持ちになってしまった。

「人前で破廉恥発言、行為は禁止だからね」

「承知しましたよ〜」

そうして、また二人で桜並木で作られた桜のトンネルを一緒に歩いた。いつか私が佐助の世界に行って、今日佐助が重ね合せたその光景を、一緒に見られたら良い。私はそんなことを思いながら桜を見上げた。





―――あ、叶ちゃん。頭に花弁が付いてるよ。はい、取れた。

―――ありがと・・・っっ!?佐助っ!!

―――あはー、我慢出来なかった。

―――キスとか、しちゃダメなの。ほら、皆吃驚して見てるじゃんか!!恥ずかしい!!

―――あ、待ってよ。んもぅ、照れ屋さんなんだから〜。



私なら、確実に恥ずかしくてその場から逃走します←やぁだ〜、何この妄想(身も蓋もないこと言ってしまった)桜見てコレ妄想してる私が一番痛いってかー。でも、今回は映像が途切れることなく続いて、久しぶりにガッと一気に書き上げられました。っていっても2日に分けましたが。三郎的お花見第二弾、楽しんでいただけたら幸いですお(^o^)丿しかしもう一つのシリーズとはえらい違いだ。


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