笑顔についての考察。




「俺様が笑えるようになったのは、アンタのおかげだよ」

耳の後ろから、佐助の低くて甘い声が囁きかけてきた。私は振り返らず、そのまま佐助の言葉に耳を傾ける。

「アンタに教わったんだ。知らなかったこんな感情。必要無いと思ってたんだ、俺様には一生・・・」

「そんなのさみしいよ・・・」

「でも、忍には要らないから。生き残るのに必要なのは、完璧な制御、決断力、合理性だけ。それを脅かすものは身の回りに置かなかった。意識的に、あるいは無意識的にも」

私は身体に回された腕をぎゅっと掴んだ。経験の無い命のやり取りの日々。佐助の生きてきた道はあまりにも過酷で。私の想像なんて遥かに超えた生活なんだろう。

「主のために命をいつでも躊躇いなく差し出せるには、それが一番楽だったんだ」

「でも―――」と言いながら、佐助は私の肩に顔を埋める。私はその感触がくすぐったくて少し身を捩る。

「知って良かった。知らないまま死んでたら、きっと後悔した。ありがとう、叶ちゃん」

佐助の口からお礼を言われて、私はお腹の辺りがくすぐったいようなムズムズするような感情が広がって、クスクス笑いながら身体の向きを変えた。佐助の顔が思ったより近くて、そっと手を伸ばす。

「佐助・・・。忍のあなたを否定するつもりは無いけど、今の佐助のが魅力的だよ。・・・・・・ね、キスしよっか?」

「・・・珍しいね、アンタからそんなこと言うの。今日は、どうしたの?」

「何となく。嫌?」

「嫌なわけ無いでしょ。大歓迎だよ、こんな気まぐれなら毎日起こして欲しいね」

「馬鹿ね、それじゃ気まぐれじゃなくなっちゃうでしょ」

「そうかもね」

そう言いながら顔を寄せて、深く口付けた。少し唇を開いて、佐助の舌を捉えて、絡めて、熱を交換し合う。もっとと求めるように、佐助が寄せた私の身体をグッと抱いた。私はそれに応えるように、佐助の首に回した腕を背中に回しゆっくり撫でる。角度を変えながら、何度も味わい尽くすかのように唇を合わせている内に、興奮で息が荒くなる。佐助が唇をなぞる様に舌の先で舐めて、下唇を甘噛みした。

「エロい顔してる・・・」

キスの合間に私がそう囁くと、佐助はニヤッと笑った。

「俺様が色んな表情するの、嬉しいんでしょ?ならさ、」

「ベッドの上でなら、もっと違う顔見せてあげられるよ」なんて、耳元で囁かれる言葉に、カッと身体が反応する。

「何言ってんの!今日はもう寝ます」

「俺様のもっと色んな顔、見たくないの?」

「結構です!!って、そういう顔じゃないの、見たいのは」

私はそう言って佐助から身体を離す。そして、腕だけ伸ばして佐助の頬に指を当てた。

「私は、人間らしい感情に満ちてる佐助の顔なら良いんだから」

そう言うと佐助は段々とくしゃりと表情を崩していく。困ったような、くすぐったいような、嬉しいような、何とも言えない顔だった。でも、それはとても私の心震わす顔で。

「そう、そう言う表情。人間臭い佐助が好きよ」

「あー、もぅ。俺様ったら忍のくせに情けない。アンタに振り回されっぱなし!」

佐助はガバッと私に抱きつくと、腕の中に閉じ込めて、ぎゅうぎゅう抱きしめる。

「佐助、くるし・・・」

「叶ちゃん、俺様、元の世界に戻れても忍としてはもう駄目かもしんないけど、後悔無いや」

佐助の口から初めて聞く想い。忍であることが生きていくことで一番であった佐助からのまさかの言葉。私は自然に零れてくる笑みを口に乗せた。

「そん時は私も一緒に行くから、仲良く違うことして生きて行けば良いわ」

「うん。俺様、アンタを愛せて良かった」

そう言っておでこに、目尻に、頬に、唇にキスされた。





―――でも、忍廃業して、俺様何しようかな?

―――団子屋でも開けば?そしたら幸村にも会えるよ?

―――うん、それ良いね・・・って、俺様何でそんな・・・。

―――何でって、一番向いてるでしょ?

―――叶ちゃん、俺様のことどんな目で見てんの!?やっぱ俺様、忍頑張る!!

―――えー・・・、忍は危ないからヤダぁ。一緒にお団子屋さんしよ、ね?

―――叶ちゃん・・・、かーわいい!!くふふ。





温かいお話を書いたのですが、アレ?なんか読み返してみると違う??と思いながらまぁいっか(゜∀゜)ってな感じです(笑)ついでに言えば、佐助さんの笑顔の変化について、実は深い話のはずなんだけどな?はは、こんなもんか。もしも何か透けて伝わったら、奇跡だよね〜☆


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