「これから火薬委員会会議を始めます。議題は火薬使用の手続きについてです――が」

「が?」

「どうかしたの兵助くん?」

「…いや、前々から言おう言おうと思っていたことがあるんだが、それを是非この場で言わせて頂きたい」

「おお…」

「どうやら改まった事情らしいですね。わかりました、聞きましょう」

「そうですね池田先輩。ほら、舟先輩ももっとこっちきて」

「あ、うん。お邪魔します」

「わ〜、舟くんいたの気付かなかった〜」

「え…何というかごめん?」

「謝ることじゃありません。というか何で謝ってんですかおかしいだろ」

「久々知先輩、いくら先輩でも先輩にタメ口はよくないですよ!めっ!」

「“めっ”って…かわいいなうちの伊助は」

「ええ可愛いんですうちの伊助は。でも今はそんな話をしたいんじゃありません」

「あ、そうだったなごめんごめん」

「だから一々謝らなくても…ああもう、話が進まないので言いますけど、何で一ノ瀬先輩がいるのに俺が委員長みたいなことをやっているんでしょうか」

「「「「え…っ」」」」

「えってなんだえって」

「だ、だってあまりにも気付かなかったから…」

「そういえば舟先輩は六年生だったんですよね!」

「全く思い至らなかった…確かに久々知先輩が委員長代理をやっているのはおかしいですね」

「だろう!? というかどうして誰も気付かないのかが俺は不思議でしょうがなかった。俺がおかしいのかとかちょっと悩んだ」

「そうだったのか兵助…それはすまなかった」

「いえもういいんです。委員長代理は委員長代理でいい経験だったし。しかしこれで漸く先輩にこの場を譲ることができます」

「よかったですね久々知先輩!」

「ああ、今夜はお豆腐パーティを」

「「「それはしない」」」

「………」

「…そ、それなんだけどな兵助」

「む、何ですか先輩。ご意見は絶賛受付中ですが挙手でお願いします」

「あ、じゃあ…はい」

「はい、一ノ瀬先輩」

「うん。ええとな、ぶっちゃけ俺はこのままでもいいんじゃないかと思ってるんだ」

「…え?」

「いやほら、兵助がここまで頑張ってくれたわけだから、俺としてはその後釜よりもバックアップに回りたいというか」

「後釜だなんてそんな…」

「それに情けない話だけど、俺にはトップって向いてない気がするんだよなあ…何というか、その、俺って地味だし」

「………」
「………」
「………」

「………っそ、そんなことありません!」

「久々知先輩、フォローには時間がかかりすぎですよ」

「いやいいんだフォローとか…自分が一番わかってるから」

「そんなこと言わないで下さい!先輩にだって一杯いいところがあるじゃないですか!」

「もうその言葉で十分だよ兵助」

「そんな…!」

「まあでも正論ですよね」

「さ、三郎次まで!」

「別に舟先輩が委員長に向いてないとか言うつもりじゃありません。ただ人には向き不向きがあるとは思うんですよね」

「まあ…そう言われると…」

「そうかもねえ…」

「伊助、タカ丸さん…!」

「そういうわけだ兵助。もしお前が無理をしているのでなければ、是非このまま頑張ってほしいんだけど」

「う、ううう…」

「勿論俺だってちゃんと色々手伝うし、できることなら何だってするから」

「ううううう…」

「兵助くん…」
「「久々知先輩…」」

「…わかりましたよ。そんなに言うなら俺がこのまま委員長代理を続けます」

「兵助…」

「ただし、いつかはちゃんと委員長としてこの場に立ってもらいますからね!」

「うん」

「そ、それから!さっきの言葉も守ってもらいますからね!」

「え?」

「な、何だってするってやつ…」

「ああ、あれ?勿論、と言っても俺にできることならだけど…」

「本当ですね!?今更冗談とかなしですからね!」

「あっ、ああ…?」

「わー、兵助くんたらオットコマエー」

「舟先輩には色々と伝わってませんけどね」

「うるさい外野。それでは火薬委員会会議を再開します!」

「おお、いきなり張り切るなぁ兵助」

「こう見えて久々知先輩は褒めて伸びるタイプですから。ほら、舟先輩正座ちゃんとして」

「あ、すいません」


***
つい謝っちゃう主人公。


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