「しかしよくペットボトルなんてこの場にあったもんだよね」
「全くだな。この乱世に桃の天然水なぞ飲もうとする奴がいたことにびっくりするぞ」
「いや俺はこんなゴミ置き場を引っくり返してまで話を進めようとするお前らにびっくりするわ」
「まあそういうなよアホす…高杉ィ」
「ノリが悪いぞ高す…バカ杉ィ」
「おいコラお前らちょっと表出ろ」
「おーい、ペットボトルはなかったけんど得体の知れない筒なら見つけたきにー」
「得体の知れないって何だ」
「得体が知れないんだろう」
「まあもうめんどいから何でもいいよ。採用で」
「やる気あんのかないのかどっちなんだ」

「よくよく考えたらカッターとかテープとかなかった」
「バカが見切り発車で適当なことしようとするからこうなるんだよ」
「いや待て、カッターがないなら刀を使えばいいではないか」
「テープは何か…あっ、そうじゃ、昼飯の残りの米粒とかでいけんかのー」
「まあもうめんどいから何でもいいよ」
「またそれかよ!つーか米粒でくっつくわけねーだろうが!」
「成せば成る」
「ちょっとカッコつけんなうぜえ」

「で?具体的にはどんな感じにすればいいわけ?」
「………」
「………」
「………」
「…ちょっと待って誰も知らないとかそういうオチかこれ」
「確かペットボトルを3個くらい繋げるのは覚えてるんだが…」
「頭がとんがってて尾翼がついちゅうのは覚えゆうき」
「バカだろお前らバカだろ。昔やった覚えがあるとか言うから始めたんだぞこれ。開始直後から何暗礁に乗り上げてんの」
「そういうお前もノリノリでゴミ袋引っくり返してただろーが」
「だってやったことないから楽しそうだったんだもん」
「だもんとか言うなぶん殴るぞ」
「ひでえ!」
「まあ兎に角やってみんと。必要は発明の母ぜよ」
「いいこと言った」
「しかし全く場にそぐわぬ発言だがな」

「…というわけで何とかそれらしいものができたような気がします」
「気がしますじゃねーよオメーはほとんど何もしてなかっただろ」
「だって刀でペットボトル切るとかマジ勘弁って感じじゃん。刃こぼれとかされた日にゃ私もう死ぬしかないから」
「オイ貴様俺の刀思っくそ刃こぼれさせといてその言い草か」
「しょうがない、あれは不幸な事故だった」
「お前今すぐボッロボロの刀で切腹すればいいのに。この上もなく苦しめばいいのに」

「まあ何やかんや接着剤的なものも見つかってよかったぜよ」
「的なものって何だ不安を煽るからやめろマジで」
「米粒はやっぱり無理だったのだよ」
「だから俺は最初から言ってただろうがその耳は飾りかテメーら」
「飾りじゃない桂だ!」
「めんどくせーな刀じゃなくてお前を刃こぼれさせてやろうか」

「ていうかこれどうやって飛ばすの?」
「ああ、それなら確かこの噴射口に空気と水を入れてその反動で推進力をだな」
「こいつバカだからそんな小難しい話しても通じねーよ」
「うるせーよバカ杉。そっちこそちょっと前まで七の段言えずに苦しんでたの知ってんだかんな」
「もう克服したわ七の段ごとき。テメーこそ未だに『ろくしちしじゅうしち』って言う癖に何偉ぶってんだよ」
「うっせーよ!アタイが47つったら6かける7は47なんだよ!」
「とりあえず何か台的なものに乗せるのと違ったかのー?」
「そうそう、それで下のとこから空気を入れてだな」
「空気を入れる台?何それそんな高度なもの必要なの?」
「そんくらい何かで代用できんだろ」
「いやしかし空気を入れた後に噴射口を締めておくものが必要だったりするからな」
「えー何それそんなん作れないよJK」
「意味不明な略語を使うな。JKって何だ女子高生か」
「違うよジョン・F・ケネディだよ」
「それっぽい嘘吐くな『作れないよジョン・F・ケネディ』って意味わかんねーだろうが。つーかミドルネーム丸無視か」

「じゃあもうめんどいから誰かが手で持って、空気入れた後は手で塞いでるという方向で」
「「さんせーい」」
「賛成じゃねーから。発射の時水がすげー勢いで噴射されんだぞこれ。そんなん危なくてやってられるか」
「やってもみないうちから何を言うか高杉」
「何事もチャレンジだと赤ペン先生も言っとったようなそうでもないような」
「大丈夫だよお前はできる子だから」
「いやいや何俺がやる的な空気醸し出してんだよやらねーからなぜってーやらねーからな」

「ええー?高杉やんないの?じゃあ仕方ないから私やろうかな」
「馬鹿者曲がりなりにもおなごにそのようなことをさせられるか。ここはキャプテンである俺が台となろう」
「左腕怪我しちゅうおんしが何を言いゆうがか!危のうて任せちゃーられんき、わしが台を全うするぜよ」
「…お前だって大怪我してんだろうが。チッ、仕方ねェここはやっぱり俺が…」
「「「どうぞどうぞ」」」
「だと思ったわ誰が『俺が代わる』なんて言うもんか」

「はっ!やばいぞ銀時がこちらに向かっている!」
「「「何ィ!?」」」
「もういいここは高杉お前がやれ!」
「嫌だ絶対嫌だ何で俺が野郎のために犠牲にならなきゃいけねえんだよ」
「これはお前にしかできないんだよ、分かるだろ!?」
「いや分からん全然分からん。ていうかさり気なく水入れて渡してくんな!」
「OK、セッティング完了!辰馬、空気入れ!」
「ガッテンじゃ!」
「ガッテンじゃねーよオイ何ナチュラルに話進めてんだコラ!」
「目標接近!到着まであと60メートル!」
「ほら我が侭言ってる場合じゃないでしょ!ハイちゃんと抱えて抱えて!」
「ちょっ、おまっ!」
「よっしゃあオキシジェントカモン!」
――シュコシュコシュコシュコシュコシュコ(空気入れを必死に上下させる音)
「ああああああああ!!!!」

「おいオメーらこんなとこで何遊んでんだよ。まだ治療が終わってねーって茨城があっちで騒いで…」
「「「あっ」」」
「あ?」

――…ブッシャ――――――!!!!
「ぎゃあああああああああああ!!??」(ガツーン!)

「………」
「………」
「………」
「………」

「…えーと」
「言っただろ、だから言っただろ」
「やはり見切り発車は危険だったか…」
「いやしかしズボラな設計の割にはいい出来ぜよ」
「つーか銀時アレ白目剥いてねえ?」

「「「「…………」」」」

「…ペットボトルロケットって意外に飛ぶもんだね」



炭酸シャワーと箱庭
(1010/戦場のハッピーバースデイ)

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