――ピンポーン
軽快にチャイムが鳴らされ、誰だよこんな夜更けにとまだ午後6時過ぎにも関わらず理不尽な台詞を吐きつつ玄関に向かった。というか本当は台詞を吐いただけに止まらず面倒臭くて華麗に居留守を使ったのだが、チャイムを連打するという嫌がらせ紛いの状況に晒されこうしてもそもそと出て行かねばならなくなったのである。くそう、私を屈させるとは中々の手練れと見た。

渋々と言った体でドアを開ける。今年の春から一人暮らしを始めた貧乏学生、お金がないという現実的な理由上から結構なオンボロアパートに住んでいるが、最新式の施錠と古びたドアチェーンがついたドアは管理人さん曰くセキュリティ対策万全であるらしい。
にも関わらず私は大して相手も見極めずドアを開ける癖があり、そのためかよくNHKのアレに捕まることがあった。ていうか奴らは一体何なんだろうね。下手な悪徳業者よりも粘着質だよね。
「いやウチ民放しか見ないんで」とか適当なこと言っても「え?でもテレビあるよね?それはないでしょ〜」とか態々首を伸ばして室内を覗き込んでくるものね。
一人暮らしを始めたばかりの頃はそーゆうのがよく分からなくて、兎に角怖くて半泣きになりながら終いには罵詈雑言を吐きつつ追い返したという記憶がある。うん、あの時の私はまだ若かったのだ。とか言いつつ数ヶ月前の話なんだけど。

そんなことを思い出しつつ投げやりにドアを開ける。セキュリティがどうこう言ってる割には何故か外側にしか開かないそれは、しかし有事には結構な武器になることを私は知っていた。現にこれでNHKのおっさんやら新聞勧誘のおっさんやらを撃退したこともある。


「うース」


しかし今回ドアを開けるとそこにいたのはNHKのおっさんでも新聞勧誘のおっさんでも管理人さんでもない、というかおっさんですらない、よくよく見知った若い男だった。


(夏の産声を空に聞く)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -