リビングから「ベリーナイス!」やら「ソーキュート!」などというアメリカ人の歓声が聞こえるので覗いてみたら、ネコミミを生やしたマオがそこにいた。

「……なんだそれは」
「あ、004さん、あの、あの」
「あぁお前さんはいい。002、説明しろ」

おろおろと戸惑うマオは明らかに被害者である。内向的な彼女が自分からそんな格好をするわけがないのだ。横で大興奮している002が要求したことに決まっていた。

「いいじゃん、可愛いだろ?」

対して002は反省する様子がない。
確かに可愛らしいが、ネコミミはなんだかマニアックで危ない感じがする。
なにより顔を真っ赤にして羞恥に耐えているマオが可哀想だった。きっと断りきれなかったのだ。

「それにしても、本物か?これ…」

見たところカチューシャなどの造りものではない。頭から直接生えてピクピクと動いているのだ。どうやって。

ぐい、とつまんだら、ネコミミから直接悲鳴があがった。

「痛いっ」

驚いて手を離すと、ミミがドロドロと変形してマオの頭から離れ、なんと007の姿になった。
擬態して張り付いていたのだ。

「優しく扱ってくれたまえよ」
「あー!なんだよもう終わりかよ!」
「お前ら……」

呆れてものが言えなかった。007まで一緒になってなにをやっているのだ。

「ぜ、004さん、ご、ごめんなさい…」
「いい。謝らなくていい。あいつらが悪い」

ため息をつく004の両肩に、002と007がニヤニヤと手を置いた。

「なんだよ〜お前だって目の保養になったろ?」
「恥じらいは日本人の美徳というものだよ。つまり控え目な彼女だからこそ可愛いのさ。そうは思わんかね?」
「………」

確かに、なんて思ってしまうあたり、004もなかなか危ないおじさんだったりした。

兎にも角にも、ギルモア邸は今日も平和だった。

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