貴方も私も相思病



八万hit企画作品/香樹様へ




祓魔師の仕事の他にメフィストさんの秘書みたいなことをしている私は理事長室で資料の整理をしていた。そんなとき、ふと視界が真っ暗になってしまい驚きで椅子から立ち上がろうとすると背中に重みを感じた



「…名前さん」


「メフィストさん…?あの、これは…」



私の視界を奪ったのも、今感じる背中の重みも全てメフィストさんのものだった。彼はいつもはこんなことしないのに…というか自分からはあまりこういう甘えているようなことはしない、のに




「え、と…」


「すみませんね、驚かせて…でも暫くこうさせて下さい」



「…いい、ですから…あの、この真っ暗なのをどうにかして下さいよ」




どうにも真っ暗なのは落ち着かない…なのにメフィストさんは「それは無理です」と言って私を抱き締める腕にさらに力を入れた




「…どうかしたんですか?」


「いえ、何も…ただこうしたかっただけですよ。それとも嫌、でしたか」



嫌なわけがないそう思ったら私は必死に首を左右に振っていた。そうするとメフィストさんの小さな笑いが耳元で響く



「そんなの分かってますよ。貴方が嫌なわけありません」


「なんですかそれ、随分な自信ですね」


「自信あるに決まってる。…だって貴方も私が好きでしょう?」




きっと今メフィストさんは嫌な笑みを浮かべているんだろうなあ…と思いながら言われたことに間違いはないので小さく返事をしておいた




「…メフィストさんは…」


「はい?」


「メフィストさんは私のこと好きですか…」




不安だったのかもしれない。頭では理解していてもやっぱり何処かで理解していない…そんな、自分の不安を取り除くために私は勝手に口が動いていた



「…やれやれ…貴方という人は」

「、あ…」



視界にいきなり光が入って反射的に目を細める。そして背中から抱き締められるようにやはりメフィストさんがいて片方の手には彼のシルクハット…。そうかあれで目を塞いでいたんだ




「私は好きでもない人にこんなことはしない。ましてや貴方以外この腕に抱きたくもありません」


「っ、」



どくん、と心臓が跳ねる。身体中が熱くなって思わず私は下をむいていた



「どうしました?聞いたのは名前さん。貴方でしょう」


「…そ、うなんですけど…」




恥ずかしさでメフィストさんの顔を見れない…するとふと気付いた。背中から感じる心臓の音…私と同じくらいに早い。信じられないようなそんな気分でそっと顔を上げてメフィストさんの方をみた




「所詮私も男だということですよ」




私の視線に気が付いたメフィストさんは笑いながらそういった。そうして何故か私は幸せな気分に包まれていて…いつもより早い心臓の音も何故か心地よく感じた



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