終わらない恋になれ




私には幼いころから妖力みたいなものがあって変なものが見えていた。そんな能力があってか余り友達と言える人は居なかった



「君が名前ちゃんかな?」


「え?」




いつもの学校の帰り道。帽子を被り眼鏡をかけた美形さんが私に話し掛けてきた…誰だろうこの人は。



「ちょっと君に話しがあってね。今いいかな?」


「…え、と…」



後ろに下がり距離を置く。何故私に…というか知らない人には着いていっては駄目、なんだ
迷っているというか困っていると通りかかった女性が私に話し掛けてきた見知らぬ男性を見た瞬間に黄色い悲鳴を上げた


「見て!あれ名取周一じゃない?」
「ほんとだっ」



名取、周一…テレビで聞いたことがあるような名前で思わず私に話し掛けてきた男性を見つめた。すると何故か眼鏡と帽子を外し…「じゃあ行こうか?」と…女性達の黄色い悲鳴が更に大きくなる。もしこれで断る術があるなら是非とも教えてほしかった





「何でも好きなものを頼んでいいからね」


「…ありがとう、ございます…」


喫茶店に入ったはいいが周りの視線が痛い。聞けば名取さんはやはり"あの"名取周一だった…ここから今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られる



「突然で悪いのだけれど君は夏目貴志くんを知っているよね?」


「…え、夏目くん…ですか?」



此処で夏目くんの名前が出てくるなんて思いもしなかった私は思わず聞き返してしまうと笑顔で名取さんは頷いた


「…知ってます」


「そうか。…じゃあ君、見えるんだよね。妖が」




当たり前のように言われた"妖"と言う言葉。どう答えようかと困っていると名取さんの顔になにやらトカゲみたいな黒いものが歩いていた…それを見た私は驚きで目を見開く



「…ああ、これが見えるならやっぱり見えているんだね」

「…は、い」



自分の頬に居る黒いトカゲに触り確証を持ったように聞かれる。どうやら妖と一緒で見える人にだけしか見えないみたいだ


「なら話しは早い。実は俳優の仕事の他に妖退治をしていてね?君には是非…」

バンッ!と大きな音をたてて喫茶店の扉が開く。驚いて振り替えるとそこには息を切らしている夏目君が居た



「夏目くん?」

「っはぁ…名前だいじょ…あれ…名取さん…」

「やあ、夏目。そんなに急いでどうしたのかな?」



急に入ってきた夏目くんに驚いて店員さんが出てきたが何でも無いことを伝えまた戻っていく。すると夏目くんは私の傍にきて隣の席に座った



「…先生に名前が男に攫われてたぞって言われて…名取さんだったんですか…」

「攫われたって酷いなあ私はただ彼女と話がしたかっただけなのに」


「名前に?」



私の方をじっと見てきた夏目くんに必死に目で助けを求めてみるそれに気が付いたのか私の腕を掴むといきなり席から立ち上がった



「すみません名取さんこれから名前と用があるので」

「いや、大丈夫だよ。…ふふ、応援してるよ夏目」

「…、失礼します」

「あ、ありがとうございましたっ…」



なにを応援するのだろうか。そんな疑問をもちながら夏目くんに腕を引かれて喫茶店を出た
しばらくお互いに何も話さないまま歩く。そして急に夏目くんは立ち止まるといきよいよく振り返った



「知らない人には着いていかないこと」

「…え?」


「…だから、知らない人には着いていくなってことだよ。ただでさえ名前は危ないんだからな」




心配しているのだろう…何だかそれが可笑しくて思わず笑いだしてしまった



「っな…何で笑うんだよ」


「ごめんね、…嬉しくて…」



「なんだよそれ」と言いながら夏目くんも私につられて笑いだした。辺りはもう次第に暗くなり初めていて、夕日が沈もうとしている


「帰ろうか」

「うん」



夏目くんにどうして私が攫われたって聞いただけでどうして必死になって探してくれたの?って聞きたかったが止めてみた


何故か答えは自分でわかっている気がしたから


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