ときめきを隠してみたけれど 「…ああ、着替えましたか。似合ってますよ」 「ありがとうございます…」 紫色の浴衣。メフィストさんに渡せられ着替えてくれと突然言われたのだ それを言った彼も"ゆかた"と書かれた浴衣を着ている 「やはり女性の浴衣はいいですねえ」 「そ、うですか。…あの、近いです…」 髭を弄りながら私に近付いてくるメフィストさんはいつの間にか異様に近くにいた 「いいじゃないですか私が見るために着て貰ったんだ」 髪を掬いとられ口元に近付ける…かっ、と顔が赤くなるのを感じて下を向いていると不意にドアがノックされた 「失礼します。お持ち致しました」 「ああ、どうぞ」 ガラガラと引かれてきたワゴンにのっているのは日本のお茶やらお菓子だった そして手早くそれをテーブルに移動させると運んできた人はすぐに行ってしまった 「あの、これは?」 「名前は食べたことがないでしょう。和菓子ですよ」 お茶を湯呑みにいれそっと差し出される。そして口に含むととても体が落ち着いた 「…美味しいです」 「それはなにより!和菓子も食べてくださいね」 何故突然こんなことをしようとしたのだろうか。聞こうとしたけどやめてみた どうせ話しを濁らされてしまうだろうと思ったからだ ああ、そういえば…と思い出したようにメフィストさんがこちらを見る 「何故こんなことをしているのか気になっているのでしょう?」 「…いいえと言ったら嘘になります」 「そうでしょう、では!教えて差し上げますかな」 ピンと人差し指をたていきなりソファーから立ち上がる。一体どんな理由なのだろうか…… 「私が貴方に好意を抱いているからですよ」 「、え」 一瞬思考が止まっていると頬に手を添えられる。…だからいつの間に近くにいるんだ 「貴方には私の好きなものを好んで欲しいのです、分かりますかな?」 にっこり笑顔を見ながら取り敢えず腰に回された手をおもいっきり捻った END...menu |