雨音はBGM 朝のニュースでは雨は降らないと言っていたのに…。そんなことを思いながら学校の玄関でどうしようかと悩んでいた。近くに傘を買えるようなお店は無い、それにこのどしゃ降りの中傘を注さないで走っていったら制服はびしょ濡れだろう…さてどうしたものか 「どうしました?」 「いや、雨が…あ。」 視線を上げると独特な格好をしているメフィストさんがいた。彼は一体いつの間に現れたのだろうか 「傘がないのですか」 「…まあ、そんな感じです」 「うむ。」 顎の髭に触れながらなにやら考え込んでいるメフィストさん。すると自分に差していても濡れているはずであろう傘を私の隣に来て傾けてきた 「…メフィストさん…」 「これで一緒に帰れば問題ないでしょう?」 問題、あるんじゃないだろうか…どう考えてもその傘に二人入ることは不可能に近い。しかしそれに気付いていないメフィストさんにそのことを言うのもとても勇気が必要だ 「…あ、の」 「はい?」 「その傘に二人で入るのは少し無理があるのではないかと…思ったり…」 沈黙。メフィストさんは自分が手にしている傘をまじまじと見て「たしかに」と簡単に納得した 「では、迎えを寄越しましょう」 「…わざわざありがとうございます…」 何がしたいのかよくわからないが追求するのも面倒だから深く考えないことにした 「それにしても凄い雨だ」 「そう、ですね。…メフィストさんは何故ここに?」 「塾長なので生徒の様子でも見に行こうと思いまして」 「今年は有能な生徒ばかりですよ」と口角を上げて話すメフィストさん。何だかいやに楽しそうだった 「おや、来たようですな」 「…なっ…」 これは車なのだろうかと疑うくらいの色をしていてとても長い。…さすが理事長と思っていいのか迷う 「…さあ、どうぞお姫様?」 「っ、よく平気でそういう事言えますね…」 差し出された手を取ると手袋越しに男の人らしい大きい手が感じられた。すると反対の手で指をパチン、と鳴らす…すると手にしていた傘が二人で入れるぐらいに大きく…あれ 「…大きくなるんじゃないですか…!」 「まあ、細かいことはお気になさらずに」 車までの距離はたったの数歩。それだけの相合傘なのに私は酷く緊張していた。…でも今度は長い距離を二人で歩くのもいいかもしれない、だなんて一人で思っている私を見てメフィストさんは静かに車の扉を開いた END...menu |