届かない言葉 腕が紐のようなもので結ばれて少しでも動かすと激痛が走る。 ただソファーの上に座り黙っているのは…そうディスクに向かってなにかしているメフィストの命令だった。命令と言っても私が自らやったようなものなのだが 「フェレス、卿…」 「…私は一切喋るな。と言ったつもりだったのだが?」 「っ、す…みません…」 冷たい声で一瞥されて身体を震わせ言おうとした言葉は消えてしまった。すると何時の間に目の前に来たのか容赦なく顎を掴まれメフィストと視線が絡む 「…貴方は賢い、だから自らここに来たのでしょう?」 「私、は」 「まあ理由なんて関係ありませんが」 新しい玩具を見つけた子供のように無邪気に笑う。それを見て震える私にメフィストは更に口角を上げた 「まあ、意見が在るなら聞いて差し上げましょう。…さあ」 「っ正気になってください」 「正気に?私は何時でも正気ですよ。可笑しな人ですね」 馬鹿な、正気な人がこんなことするわけがない。そんなことも分からなくなってしまったのか 「フェレス卿っ…」 「ふむ、どうやら疲れているようだ。睡眠をとった方がいいのでは?」 「必要ありません!…話をっ」 「…はい。ストップ」 ピン、と立った人差し指を唇の前に立てられる。その動作に私の言葉は止まる 「貴方は自分の置かれている状況を理解していないようだ。正気で無いのは名前のほうでは?」 「す、みません…口が過ぎました…」 思わず熱くなってしまった思考をなんとか冷静にさせる。 …ああ、そうか…もう… もう貴方には私の声は届かないのだろうか? END...menu |