これはプロローグの始まり 可笑しい。 なにが可笑しいって何もかもが可笑しいんだ…どうしたらさっきまで自分の部屋に居たのに理事長室に居るんだ。何故理事長室と分かったかは見れば直ぐに分かるほどに変だから 「…理事長。ふざけ…悪ふざけもよして下さい」 「貴女がメールをしても一向に返事がないので。」 「急用なら電話で…」 「急用ではないです。」 この野郎!急用じゃないなら呼ぶなって何回言えば分かるんだっ…私にもプライベートがあるんだ!苛々しながらソファーがドサッ、と音をたてるくらいに座る 「おや、随分機嫌が悪いようだ」 「そりゃそうでしょう。私だってプライベートがあるんです」 「それはそれは、失礼しました」 「絶対失礼だと思ってませんよね。」 この人は人の神経を逆撫でするのが趣味なのだろうか、もしそれが本当だったら相当性格が悪い 「っ、はあ、もういいです。で、結局のところ本当に何の用ですか」 「ああ、それはですね。貴方の顔が見たかった、じゃ駄目ですか」 「…帰ります。」 理事長の制止の声が聞こえるがそんなのどうだっていい。早くしないとテレビが終わってしまう 願うことなら次来たときには自称紳士から本物の紳士になっていますように…無理か… もしかしたらというか、絶対後を追ってくると思ったのに予想外なことに理事長は来なかった 代わりに携帯がメールを受信された 「…は。…え?」 ―今すぐとは言いません。私も紳士ですから!あと5分以内に戻ってこないと…。さてどうしましょうかね 何だか無性に苛々する文章だがいやな予感しかしないからわざわざ長い階段を降りてきたのにまた昇る羽目になってしまった。 疲れ切った身体で扉を開ける するとそこにはストップウォッチをもったメフィストが紅茶を片手に優雅に座っていた 「…きま、したよ」 「おや、ご苦労様です。4分48秒…ギリギリですな」 一体自分が何様だと思っているんだ。この似非ピエロは 私は悪くないのに、寧ろ被害者なのに…ちらりと時計を見るとテレビは終わってしまっていた 「…馬鹿」 「少なくとも貴方よりは賢いと思いますがね。それに私の話を聞こうともしない名前も悪いのですよ」 「なら電話で…」 「女性へのプロポーズを誰が携帯でしますか」 「…ぷ、ろ…?」 プロポーズと言ったのか、この人は…っ! 突然のことで呆然としていると「変な顔になってますよ」と笑いながら言われてしまった 「…、え…あのっ…」 「動揺しすぎでは?…まあ、無理もありませんか」 ゆっくりとした動作で立ち上がるメフィストを視線で追う…なに考えているか分からないからこそ、これが本当かどうかなんて私に分かるわけがないんだ しかし、私にプロポーズすると言うからには私のことが好き、ということになる…なのに何故… 「っなんで虐めてくるんですか!」 「虐める?…ああ、好きな人ほど虐めたいと言うでしょう!」 「…小学生ですか…」 呆れて物が言えないとはこういうものなのだろう。後、バクバクと五月蝿い心臓をどうにかして静めたかった 「いきなり返事を聞こうとは思っていませんよ」 「…、安心しました」 「無理矢理返事を聞いてもそれが正しいとは言えませんからね」 「まあ、気長に待ちますよ」と私の姿を見てニヤリと笑った。 ―まるで獲物を捕まえた獣のような瞳で… END...menu |