差し伸べられた手には必ず裏がある







バキ、と不吉な音が身体から聞こえた。私の体に当たった、いや、当てられたのは"止まれ"とかかれた道路標識
そんなものを投げられるのは私が知っているかぎり一人しかいなくて…寧ろ世界中を探していたら最悪なのだが



「手前よォ…いつもいつも俺の前に現れやがって…」



「…好きで現れた訳じゃ…ないんだけど…っく…」




なぜ池袋の喧嘩人形に嫌われているかなんて私は知らない。寧ろ教えてほしいくらいだ
いきなり標識を投げられた
それだけ
身体が痛い。
もう感覚なんかないのじゃないかと思うくらいに



「っ…は…ぅっ…」



「…おい、次俺の前に現れたら只じゃすまねえからな」





そう吐き捨て去っていった。
完全に姿が見えなくなるのを確認するとやっとのことで体を起こして壁に寄りかかりため息をついた




「あー…1、2本折れてる…か…」



あいつは女にも容赦ないのか…
まあ、命を見逃してくれたのは感謝したい…


すると私の目の前に誰かが立つ




「ひどいことするねえ、大丈夫かい?」




「…折原」




真っ黒な服に身を包んだ新宿の情報屋をしている折原臨也

見た目は爽やかな青少年で騙される女は二桁は居るだろう、…しかし、性格が最低だ。
ここまで歪んだ奴にはあったことがない




「骨、折れてるだろ?」




…まさか。助けるというのか

口元を歪ませて私を見下している折原。

是非とも遠慮したいのだが、残念ながら今頼れるのは目の前にいる折原しかいない




「ほら、君も人間なんだから分かるでしょ?今。なにを言うべきなのか」



「っ…」




このままここに居たほうが良かったのかもしれない。しかしここに居続けたら間違いなく柄の悪い奴等に絡まれるだろう
抵抗する力も残っていない…



「…た…、…て…い…」



「なに?」



「…助けてください…っ」



本当に最悪だ。
屈辱感に満たされる
そして、男にしては細く、白い手が差し出された
再び見上げて折原の顔をみる赤い瞳と視線があう



「ようこそ。"池袋(非日常)"に」








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