だから傍にいて








人間なんて脆いものだ。なにかダメージを受ければそれ相応の代償が表面に現れる…そんなの、自分で十分理解していたつもりだったのに。突然すぎる自分の変化…声が出ない自分に動揺し涙を流した…医者にはストレスが原因だと言われ、病院に行った足でそのままある家に向かっていた




「名前じゃないか、突然どうしたの。」

「…」



何を考えて臨也の家に来たのかなんて自分でも分からない。ただ、今の状況の私を見てもいつもと同じに接してくれるのは臨也だけだと思ったからだ




「…名前?」



でも、私はどうすればいいんだろう…不思議に思っている臨也に医者から渡された書類を渡す。すると彼は無言で受け取り読み始めた



「…喋れないの?」



こくん、と首を縦に振った。臨也はそれを確証したと同時に表情を若干曇らせた




「…、何…まさか俺に別れを告げるために此処に来たとかないよね」




ゆっくりと顔を上げて臨也の顔を見る…正直自分でも此処に来た理由は分からない、そんなことも喋れないから伝えられなくて臨也は何を勘違いしたのか私を強く引き寄せると離さないとでも言うように抱き締めた





「…ねえ、俺から離れるなんて考えないでよ…喋れなくたっていいから…」



どうしてそんなこと言うの?私は臨也が望むならずっと傍にいるよ。必死に喋ろうと声を出してみるが喉を通って出るのは擦れた息の音だけ




「…名前は馬鹿だよ。一人で溜め込むから…これからは俺に何でも言いなよ、聞いてあげるくらいは出来るからさ」





私の瞳からは我慢していたはずの涙が自然にこぼれ落ちていた。拭うことも止めることもせずにただ首を縦に何回も振って心のなかでありがとう、と何回も言った








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