縋っていいのは人間たちだ



無知なんて存在しない、もしそれを連想させる奴が居たらただの頭の悪い奴だ。ただ人の言うことばかり聞いて馬鹿みたいに行動する



「君はさ、自分勝手にしてみたいとか思わない訳?」


「え?いや、特には…」




「ふーん、じゃあさ俺が死ねって言ったら君は死ぬわけ?」




意味の無い質問、冗談しか交じっていない言葉に彼女は顔を上げると微笑んだ…俺は何か可笑しなことを言っただろうか、それとも頭がいかれてしまったのか…




「折原さんはそんなこといいません」


「…なんで君に分かるのさ」


「だって、私が死んでも折原さんには利益がないでしょう?」



確かにそうだ、しかしこんな人にヘラヘラと愛想笑いばかりする名前に自分のことを見透かされたと思うと苛ついた



「君の臓器を売りさばいて金にすることだってできる」



「……、私は死にたいとは思いません。そんな人間を折原さんは殺したいですか」


「殺したい?俺は殺さないよ。人間を愛しているからね」




彼女は勿論人間だから笑うし悲しむ、時には涙を見せることだって
…そんな名前を俺は何故"死ぬのか"なんて聞いたのか



「名前も愛してるよ。人間だからね」


「…自分はどうなんですか?」


「…俺?」



本当は名前と話すのが嫌いだ。思考が読めないし、人間の行動とは違うことばかりする
今の質問だってそうだ。俺が俺自身を好きかなんて…考えたこともない



「折原さんは人間を愛しているから情報屋をやっているんですか?誰に恨まれても可笑しくないのに」



「五月蝿いなあ…君なんなの。さっきから俺を探るような質問ばかりしてきて…もしかして俺が好きとか?残念俺は一人だけは愛さないんだよ」



「…違います、私はただ…」

「もう君と話すことはないからさ、帰ってくれない?」




動物を追い払うような仕草をしてパソコンに向かう。そのまま名前は何も言わずに荷物を手に取るとそっと出ていった



「……はあ…」



今のを見られていたら他の奴は俺が答えから逃げたと思うだろう。そして名前は多分本当に馬鹿だから本気で俺みたいな奴を心配してくれたんだろう

…馬鹿、だなあ。ホント
馬鹿で時々鋭いところがあるなんて何だかシズちゃんみたいだ



俺が俺自身を好きか嫌いかなんて君が一番わかっていることだろうに。






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