小説 | ナノ


放課後珍しく部活が休みで、河川敷で練習でもしようかなと考えているとまさかの日直の仕事に当たってしまった。仕方ないと割り切って仕事をこなしていく。黒板も綺麗にしたし日付も書いた、最後の仕事は日誌だけ。しかしこれが一番の難関で、今日1日の感想をまとめるなんて正直頭があまりよろしくない俺にはハイレベルすぎる。サッカーについてなら沢山書ける自信はある、けれどそのサッカーは今日はお休みで。なんてタイミングなんだ。
頭を抱えて思考をぐるぐると巡らせるがなかなか思いつかない。ふと窓の外を見ると真っ赤な太陽が地平線に沈みそうで柔らかな光が教室の半分を包んでいた。はやく終わらせないとまずい、そう思ってまた考えを巡らせるが焦れば焦るほど思いつかなかった。

「松風…?」

声をかけられて抱えていた頭をあげると教室の扉のところに剣城がいた。なぜこんな時間に。病院行くって言ってなかったっけ。疑問をそのままぶつけると急に検査が入ったせいで行けなくなってどうしようかと悩んでるうちにいつの間にか寝てしまっていたらしい。なにそれ剣城可愛い。

「お前は?」

「え?」

「何でこんな時間まで…って」

日誌か。近付いてきた剣城が俺の机にあるものを見てそう呟いた。

「書くこと思いつかなくてさ」

「そんなの適当でいいだろ」

それは分かってるんだけどその適当が難しくて、そう俺が言うと剣城は松風らしいなとふっと小さく、それでいて柔らかく微笑んだ。前の剣城には考えられないそれに胸の真ん中あたりがどくんと反応したのが分かった。じっと見つめ続ける俺を不審に思ったのか松風?と首を傾げられる。嗚呼、そんな反応しないでよ。目の前の可愛い人に、誤魔化すように笑った。




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日誌書け

title by hmr

20120107