小説 | ナノ


四時間目の授業、生物。先生からプリントを配られてそれと全く同じことを説明される。正直くだらねぇ。勉強なんて嫌いだ、それならみんなでサッカーするほうが何万倍も楽しい。チラッと先生を見てみれば体をゆらしながら少なくとも3分の1はきいていないだろう生徒たちに一生懸命――というほどでもないか、普通に――語るように説明していた。先生の口からホモやらヘテロやら優性だとか劣性だとか。今何をしているのか全く分からない。前までウニについてしてなかったっけ?今日授業の開始とともにもらったプリントに目をおとす。なるほど、今は遺伝について勉強しているらしい。興味なんてわくはずもなく不意に出てきそうになったあくびをかみころす。はやく昼休みにならねぇかな

「次はエンドウを検定交雑、つまり劣性ホモとの――」

ななめ後ろの席からガタリと大きな音がした。誰かなんてわかりきっているけどつい後ろをふりむく。

「基山―?どうかしたか?」

「いいえ。何でもないです」

顔を赤くしたヒロトがくずれおちていた。



「今日の生物の授業の過剰な反応どうかしたのかい?」
からあげを食べながらさっきの授業についてたずねる風介。俺も気になってた。

「お前らしくなかったぜ。取り乱しすぎて」

たまごやきをほおばりながら続ける。あ、だしまきだ。うまい。

「だってさ‥」

思い返してはずかしくなったらしい、顔を赤くしたヒロトはフゥーと一度息をはいた。

「急に円堂くんの名前がでてきてさ、しかもホモだなんて聞こえたから…」

つい、といいながら急にうっとりとして空を見上げだしたヒロト。天気はいいし、ここは屋上だから相手を思い浮かべるには最適だろう。が、そんなヒロトに俺は少し、いやかなり引いてしまった。ちらりと隣を見ると風介も同じように引いていた。これ以上この空気でいるのはやめよう、飯がまずくなりかねない。何か話題を変えようと頭をめぐらせる。そういえば、

「授業聞いてたらそんな反応するほどでもなかっただろ?」

あ、これじゃ話題変えれてない。何言ってんのさ、というような風介の視線を感じる。

「あー、いつの間にか寝てたみたいでさ。たまたま入ってきた単語がそれで、つい、ね」

「授業中に君が居眠り?珍しいこともあるね」「テスト近づいてきたから勉強してたんだ。苦手な分野だったから時間かかっちゃって、寝たの遅くてさ」

「それで居眠りか」

なんと、話題が変わった。話の流れはそこからテストについての話になった。話題の変換ができたことに安堵を覚えたが――前に話の流れに失敗して昼休みの間延々と円堂についての話をされた。あの時は死ぬかと思った――これはこれで嫌だ。せっかくの休み時間に勉強の話なんて。
俺の思いなんて気付くはずもなく二人の会話は進んでいく。今回の範囲は―とかこの日のテストは―とか。食事中も勉強なんて死ぬ。あのおいしかっただしまきの味が今はしない。

「ヒロトはいつも何日前に勉強するんだい?」

「んー、こつこつやってるからそこまでらしいことは…。しいて言うと2週間前かな」

「えっ、そんなに前から!?」

ヒロトの言葉につい反応してしまった。2週間も前にしたら絶対テストの日にはやったこと忘れてるわ。俺には無理だ。

「じゃあ晴矢は?」

「一夜漬けだろう?テストの日になるといつも部屋の電気ついてる。」

ヒロトの問いに俺じゃなくて風介が答える確かにそうだ、いつもテスト前に焦って一夜漬け。間違ってない、でも何か腹立つ。

「一週間前にしようとしても…集中できなくてついダラダラしちまうんだよ」

「本当君らしいね。だからいつも点数ギリギリなのさ」

「うるせえ!そういうお前はどうなんだよ?」

「私か?そうだな、合間の休み時間に教科書を見る程度だ」

「は?/え?」

俺とヒロトの声が重なった。こいつ何言ってんだ?テストの合間の休み時間というと十五分くらいしかないのに、たったそれだけ?

「私には智の女神がついているのさ。私ばかり神に愛されて申し訳ないよ、晴矢」

「ふざけんな!どうせ点数悪いんだろ」

「言っただろう?智の女神がついていると。残念ながら学年トップ十に入るレベルさ」

自分に酔い始め背景に光でも出しそうな勢いだ。効果音にキラキラと聞こえ始めた俺の耳終わってる。
ありえないだろ。今まで見てきた中で風介が真面目に授業を受けているところなんて数えれるほどのはずだ。大抵はボーっと外を見ているか寝ているかだ。なのに学年十位なんて…ありえねえ。

「…ありえない」

「ふっ、事実さ。きみは理解力が本当に乏しいね」

「はあ!?」

お互い罵り合ってしばらくするとヒロトの声がしないことに気付く。二人してヒロトのいるほうを見てみると首をこくりこくりと揺らしながら寝ている姿が。昨日本当に夜遅くまでしてたんだな、と思う。ヒロトの体を横に倒して上着をかけてやる。

「風介」

「なんだい?」

「俺たちも寝ようぜ」

「…ああ」

ヒロトを真ん中にして俺たちもコンクリートの上に横になる。
とりあえず今日から勉強しようと思った。







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これもエイリア祭にて捧げ。3TOPかわいい

title by 自慰

20111023