小説 | ナノ
今日の練習も終わって、試合もなくてものすっごく暇な午後。何かないか、時間をつぶせるもの。自分の部屋を見回しても特になくてベッドに倒れこんだ。
静かな部屋とは対照的に廊下からドタドタと音が聞こえてくる。その音がだんだん大きくなってきて、止まったと思ったら今度は部屋の扉が勢いよく開いた。
「ネッパ―大変だ!」
「うるせーよ。何があった?」
はあはあと息を乱しながら笑顔を浮かべるヒート。何か気持ちが悪い。
「宝くじ!当たったんだ!」
「へー。いくら?」
宝くじってお前何歳だよ。しかもいつ買ったんだよ。大した額は当たってないだろうと思いながらも横になりながら一応聞く。
「それが…」
「うん」
「百万円!」
「…はっ?」
この時俺は本当に時が止まったように感じた。こいついくらって?百万?え?まじで?ベッドから跳ね起きてヒートが持つ新聞と宝くじをひったくる。一等のところの数字を調べてみると。
うわ。
「当たってる…」
「だろ!」
にこにこと笑うヒートを見て俺もだんだん頬が緩んでいく。すげー!百万!
「でかしたヒート!さっそくバーン様に報告だ!」
このことをいち早くバーン様に知らせなくては!俺たちは宝くじと新聞を持って走って部屋を出て行った。
探すこと十分。ようやく見つかった姿に大きな声で呼びかける。気づいたらしく俺たちのところに向かってきてくれた。
「どうしたんだ、二人とも」
「バーン様見てください!」
「うおっ…宝くじ?」
ずいっと目の前に宝くじをつきだすとバーン様は驚いたように一歩後ろに下がった。しまった、勢いよく前に出しすぎた。
「当たったんです!宝くじ」
ヒートも新聞を広げてバーン様に見せる。じっと二つを見比べて確かに、とつぶやいた。
「でもな、二人とも」
「?」
「この新聞先月のだぜ」
指された日付を確認すると九月三日。今日の日付は十月三日。
「気にすんなって。じゃあ俺用事あっから行くぜ」
フリーズする俺たちを置いて颯爽と去っていくバーン様。後姿もすばらしい。
と、そうじゃなくて。
「ヒート!」
糠喜びさせやがって!ギンと睨むように横を見ると、あからさまに落ち込んでいるようでバックに黒いもやもやが見える。なにこれ怖い。
「はあああ……」
「お、おい…」
これだけ本人が落ち込んでいると怒るに怒れない。むしろ心配してしまう。
大丈夫か、と声をかけようとする前に、ヒートがぽつりとつぶやいた。
「せっかくネッパーのこと養えるって思ったんだけどな」
「はっ?」
本日二回目――いや三回目か――のタイムストップ。それから徐々に顔が熱くなっていくことが分かった。
「何言ってんだヒート!」
「え、俺何か言った?」
無意識だったらしい。その事実に余計に恥ずかしくなって。
俺は逃走した。
(ヒートがあそこまで喜んであそこ落ち込んだのは俺のためだったなんて!)
−−−−−−
これもエイリア祭にて捧げ。ヒトネパははじめてで口調が分からなかった。もっとヒートを知ろう私!
20111023
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