生殺し



俺、中居祐弥は自他共にに認める不運っ子だ。歩けばバナナや空き缶に滑って転ぶのは当たり前で、それどころか何もない所でも転ぶ始末。勉強だって運動だってできないわけじゃない。−−自分でいうのもあれだけど努力するタイプだし−−でもその度にテストでシャーシンが全部ない、鉛筆使おうとしたら芯が折れてる、体育の実技テストでは運動靴の紐に引っかかって転けたりとどめに鳩のフン落とされたりしたな。ドジっ子とかそんな可愛いもんじゃない不運なんだ。
昔俺のあまりの不運さに親が心配して有名な霊能者やお祓いの人に見てもらったことがある。誰かに呪われてるんじゃないかってね。そこで何言われるかと思ったら「この子は不運の星のもとに生まれたのです。私にはどうすることも…」だって。え、俺どうすればいいの?もう死ぬしかないの?と、まあその時はかなりショックを受けたけど今ではなるべく前向きに生きることにしてる。てかこんな不運な星に生まれた俺にも救いがあったんだ!

「佐藤!」
「あ〜中居ちゃん。今日はまだ大丈夫ぅ?」
「うん。まだ大丈夫だった」

そうやりとりしながら彼、佐藤圭に抱きつく。うう、安心する。この年で男が男に抱きつくとかどうかと思うがこいつは別!救いというのは佐藤のことで、佐藤はなんと"こいつがいるところに幸あり"と言われるほどに幸運なやつなんだ。歩けばお金拾うとかそのルックスから永久モテ期とかテストのヤマ当て100%とか。前に暇で投資した会社が急激に上げ調子になって大儲けしたってのも聞いたな。でそんな幸運オーラの恩恵か佐藤といるときは不運な目にあわない。そのことがどんなに嬉しいか…。別に幸せになりたいなんて大それた夢は持ってない。ただこの人の何十倍もの不幸が和らぐだけでも精神・体力共に随分楽になった。
佐藤と知り合ったのは2年から、クラスと生徒会でだった。俺が副会長で佐藤が会計で…まあそんなことどうでもいいや。とりあえず佐藤と知り合えて本当によかった。

「中居ちゃん抱きついてくれるのは嬉しいけどごめんねぇ。離してくれる〜?」
「え、なんで?」
「ちょっと先生に呼ばれちゃって〜」

あははと笑う佐藤。うお、さまになる!
理由は大方その髪色だろう。佐藤はしゃべり方からしてチャラい。そして緩い。いくらこの学校の規則が緩いからって自由すぎだ。なんだ髪色ピンクって。

「ピンクになんかするからだろ」
「だってぇ、その方が中居ちゃん見つけやすいでしょ〜」

中居ちゃんよりは高いけど俺そこまで見つけやすいほど身長ないし〜。と続ける佐藤の言葉に深く感動した。俺のためにそこまでしてくれるなんて。

「佐藤大好きだ!俺お前いねぇと生きていけねぇ!」
「あっは、ありがと〜」

んじゃちょっと行ってくる。と椅子から立ち上がる佐藤の腰にもう一度ぎゅっと抱きつく。てかへばりつく。今佐藤と離れたらすごい不運がおきそうな気がするんだ。

「待ってくれ!(今は)俺を1人にしないで!」
「! わかったよぉ」

半分涙目で俺の必死なまでの願いが通じたのか佐藤はまた椅子に座りなおしてくれた。ごめん佐藤そして指導の先生。でも今は本当だめ。

「ほら泣かないで、おいで〜ぎゅ〜」

そう言って前から抱きしめてくれる佐藤。悪いと思いながらも俺は今のうちに幸運オーラをチャージさせてもらうことにする。

「(でもさあ、これって生殺しだよね〜)」

心の中で佐藤が思ってことなんて知るよしもなく、俺は背中に回した腕に力に強めた。






−−−−−−
場所は教室でまだ朝ぐらいなんだけどなあ。こいつら朝から甘いな。でも補足するとこの2人は付き合ってません。佐藤→中居です。中居は今まで不運すぎて恋する暇なかったんだ。



20110403

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