面白くない。全くもって面白くない。
余裕ありげに笑む兄に、口を引き結んだ。新歓の頃はあんなに頼りなかったのにと毒づくも、軽く受け流される。兄弟とはいえ同い年なのに、この相手にされてない感じはなんだろう。おもちゃで猫と遊んであげてる、みたいな。
そう、そうだ。〜してあげてる感が面白くないのだ、多分。
「兄貴」
驚く顔が見たかった。あわよくば拗ねてほしかった。余裕があるのは俺だと思いたかったのかもしれない。なんにせよ、マウントを取られっぱなしというのは癪である。
「なんだ?」
春ごろだったら絶対微妙そうな顔をしただろうに。
「っなんだじゃないだろ!もっと…もっとさぁ…」
「もっと?」
続きを促され口を噤む。完全に遊ばれてる。
俺はなんと言おうとしたのだったか。もっと…もっと?
"ちゃんと相手しろよ"
思い浮かんだ続きに顔を背ける。なんだ、ソレ。それじゃまるで構ってほしい子供みたいじゃないか。
「…由?」
「うるさい」
「ああ、ハイハイ。お兄ちゃんは黙っときまーす」
わざとらしい兄の言葉にムッとする。お兄ちゃんお兄ちゃんって。
……弟の気も知らないで。
構ってほしいなんて、言うもんか。そわりと浮つく心をひた隠しにする。途端、兄の感情が微妙に伝わってきて顔を顰める。
……これ、もしかしてバレてるんじゃなかろうか。共感覚というのも厄介だ。はぁと溜息を吐き、ニヤつく兄を小突く。
全くもって、面白くない。
兄は今日も気づいてる。
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