「兄貴」
ぱち、と目を瞬かせる。したり顔をした由と目があった。へらりと笑むと、鼻白む。俺が兄貴呼びに怯むとでも思ったのだろうか。思ったんだろうな、かわいい。
「なんだ?」
「っなんだじゃないだろ!もっと…もっとさぁ…」
「もっと?」
意地悪く続きを促すと、由はふいとそっぽを向く。
まず、思春期の子供のようにひねてみせるくせに俺を兄と認めていることがかわいいのだ。俺のリアクションを読み違えている弟は気づいてすらいないのだろう。兄貴ぶるなと反発していた自身の変化に。
かわいい、なぁ。
由は今日も気付かない。
(20/21)