BL短編
投げやりアドバイス
 日本人のエアーリーディング能力、すなわち空気を読む力は、言語にも勝るのだと云う。

 日本人同士では察せられる相手の機敏を、外国人は察することができない。
 これは日本と云う環境の中で育まれた日本人独自の能力なのかもしれない。

 ならば。

 逆に言うと、日本に住んでいると云う条件下では誰もが等しく空気を読める筈なのだ。

 ……なぜ俺、菊池浩介〈キクチーコウスケ〉が長々とこんなことを語ったかと云うと、それは今現在俺を取りまいている環境が関係する。

 全寮制学園であるうちの高校は、まさしく王道学園そのものだった。そして、生徒会メンバーもわざわざそうしたのかと疑うほどに王道メンバーだった。

 俺様会長、腹黒副会長、チャラ男会計、無口書記。

 そして、今年に入って王道転校生がやってきた。ただし奴はアンチのほうだった。クソ黒モジャ野郎なのだ。

 日本産まれ日本育ちのクソモジャは、驚くほどにエアーリーディング能力が欠如している。
同じ日本人と認めたくない。

 人と会話する気があるのか疑うほど一方的に話すモジャ。エアーリーディング云々以前に、人の話を聞いてほしい。せめて人間になってほしい。今のままではDQNにもなれていない。

 モジャは、美形キラーだ。そして俺は高根の花と名高い王子こと菊池浩介だ。適当に愛想振りまいて過ごしてたらいつの間にかそうなってた。
 猫をかぶる気はなかったのだが、いつのまにか遠巻きに崇拝される対象になってたから、結果的に猫かぶりみたいになっている。ちなみに友達はいない。ボッチ? 知ってる。

 俺だって、ずっとボッチだった訳ではない。いたことはいたのだが、面倒になったのだ。

 この学園の生徒でこれを知っているものはいないのだが、俺は口が悪い。

 で、俺の顔は爽やかそうな人当たりよさそうなイケメン顔だ。そんな顔で毒を吐かれると傷つく、と言われた。

 分からんでもないが、俺だって思うところはあるし、なによりなぜ他人のために自分の性格を顔に寄せねばならないのだ。

 かったるいのである。

 でも、今は1人くらいは友達を作っておくべきだったかと後悔している。

「もーっ、浩介はしょうがないなーっ! 俺が友達になってやるよ!」

 ……さて。この俺に投げかけられている言葉でだいたい察して頂けただろうか。散々引きのばしていた今の俺の状況について述べさせていただく。


 ずばり、クソモジャに絶賛絡まれ中だ。代われるものなら代わってほしい。

 ほんと、鬱陶しい。

「浩介は友達がいないんだもんな! 俺が親衛隊なんてぶっ潰して大切な親友を守ってやるよ!!」

 やめろ。俺は友達が出来ないんじゃなくて作らないんだ。

 それに、唯一の交流相手が俺の親衛隊なんだ。それ潰されたらマジでボッチだからやめろ。

「ク…、長瀬〈ナガセ〉くん?」

 やめろ、という無言の圧力を黒い笑顔でかける。

 クソモジャは頬を赤くして目を逸らす。

「なッ…、なんだよ! 浩介!! そんなに見つめたら恥ずかしいだろ!!」

 きもいわ。

 そして何を思ったのかクソモジャは、デュホデュホという笑い声が似合いそうな汚い笑顔を俺に向け、じっと見つめてきた。あれか、自分だけ照れるのはズルイ、みたいな感じか?

 俺は自分が露骨にそういった対象としてモジャに見られているのを感じ、視線の気持ち悪さに思わず顔を背けた。

「照れるなよ〜!! かわいいな!」

 ちがうわ、ボケ。

 色ボケした、というかボケボケしたモジャに、俺はただただ溜息をついた。


(目を逸らされるのは照れてるからじゃないって気づこうね)





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