BL短編
バカとビッチと変態とA
 自室に服を取りに行ったのは、秋から冬にかけての季節の変わり目のことだった。取りに行く、というのも俺が現在友人の部屋に居候させてもらってるからだ。そうなったのには一応の理由がある。

 俺の同室者、須藤直哉とその彼氏、比嘉智樹があまりにもお盛んだったからだ。二人で盛り上がって、果てには公開プレイと称して俺に見せつける始末。正直、いろんな意味できつかった。

 二人ともファンクラブ持ちの人気者だ。ただ、須藤には裏ファンクラブしかない。というのも、彼がビッチと名高い生徒であるがゆえに表立っては騒げないのだ。対して比嘉はどうかというと爽やかな面立ちに品の良い振舞いから学園随一の人気者だった。ファンクラブのメンバーも一番多い。

 だが、彼らの情事に巻き込まれたものたちは知っている。比嘉智樹はとんでもない変態だ。須藤はヤりたいだけだ。比嘉はそれにマニアックなプレイを、がつく。

 つまり、比嘉の方が性質が悪い。

 だから俺は二人の情事に巻き込まれないよう、こうして授業をサボって自室に戻っているのだ。……が、もしかしたら普通の時間帯に来た方がよかったかもしれない。

「なんで亀甲縛り?」
「あれ、坂井くんは縛り方に拘りがあるの?」

 俺は監禁みたいに乱暴な縛り方をするのも好みだなぁ。と余計な情報を口走りながら比嘉は俺の後ろに回った。

 やばい、と思ったのは縛られて身動きが取れなくされる直前。だが、遅すぎた。縛りのエキスパートというかっこよくもなんともない称号を自称する変態比嘉には敵わなかった。(因みに俺は亀甲縛りじゃなくてただの捕縛状態だ)

「坂井、ホントごめん」

 真っ裸で亀甲縛りで床に転がされた須藤が申し訳なさそうに言う。こういうとこ、比嘉と違って常識人なんだよなぁ。

 今俺たちが転がされているところはベランダの床だ。リビングに入って、ベランダの方を見ると須藤が裸で縛られているのを見た俺は、何か犯罪に巻き込まれたのかと思って駆けよってしまったのだ。生憎、死角に隠れていた比嘉を見落としてしまった訳なのだが。

「なにしてんの?」

 比嘉は、裸の須藤に何もしていなかった。近くにすらいなかった。俺が犯罪だと思ったのも、見える位置に比嘉がいなかったためである。ゆえに尋ねてみた。

「ん? 最近、視姦にハマってさ。視姦プラス言葉攻め。萌えるよ。交ざる?」
「いや、結構です」
「じゃあ、見てるだけね」

 それすらも遠慮したい。が、比嘉はスイッチが入ったようで、エロい目をしていた。須藤もそれに流されたのか、どこか誘うような目つきをしている。

「ね、俺がどこ見てるか言ってごらんよ」
「…ちんこ」
「ん? 聞こえないな。もっと大きな声で言ってくれる?」

 白々しい比嘉の言葉に半泣きになりながら須藤が言う。

「…俺の、ちんこっ」

 まだ理性が残っているのか、須藤には猥語を言うのに羞恥があるらしい。

「もっと可愛く言ってよ。おねだりみたいにさ」

 比嘉の言葉に赤面して目を潤ませた須藤は、何か限界を突破したらしく、やけくそのように叫んだ。

「俺のヤラシク先走りでぬめぬめのエロちんこ!! もぅやぁ…っ! くちゅくちゅしてよぉ…っ」

 熱のこもった視線に我慢が耐えなくなったのか、須藤は体にロープを食いこませながらくねった。ロープは尻の割れ目にもくいこんでいて、彼の秘部を強調するかのようだ。先走りがかかったのか、一部が湿って色が変わっているのもまたいやらしかった。

 比嘉は明らかに須藤に欲情しているにも拘わらず、須藤でまだ遊ぶつもりならしい。溜息を吐いて気持ちを落ち着かせてから、また須藤に意地の悪い言葉を掛け始めた。


「悪い子だね…。こんなに涎を垂らして…。そんなに挿れてほしいの…?」

 比嘉は須藤の下の口に指を抜き差ししながらそう問う。その度にぐちゅぐちゅと書き混ざる音がして俺の下半身が緩やかに勃ちあがった。

「ひゃっ、ぁ、ぁ、んん…!」
「ここに何人のちんこを咥えこんだんだ?」
「ぁ、ぁあ、ン、ぁ、分かんな…ぁはぁっ、いっぱ…ッ!」

 須藤は懸命に答えるが、その返事は喘ぎ声に混じっている。分かりきった答えだったろうに、比嘉の目は一瞬嫉妬に塗れた。

「ふぅん、いっぱい、ね」

 比嘉はそう言いながら須藤の乳首の飾りの周りをくるくると撫でる。

「ふ…ぁ、いじわる、しないで…っ!!」

 決して飾りだけは触ろうとしない比嘉に焦れた須藤が、身を捩る。ロープが食い込んだのか、須藤は甘い声を漏らした。

「…どうしてほしいの? 言わなきゃ分かんないよ」
「触って…奥、突いてほし…」
「何を触ってほしいの? どこの奥? もっとはっきり言いなよ」

 分かっているだろうに、イヤラシイ言葉を敢えて言わせようとする比嘉。比嘉の言葉に、須藤がくしゃりと顔を歪めた。泣きだしそうなその顔を見て、俺は少し意外に思った。

 須藤はビッチだと聞いていたから、てっきりもっと余裕ありげに男を誘うのかと思っていたが、案外余裕がなさそうだったからだ。それはやっぱり好きな相手だから、だろうか。

「もぅ、やぁ…っ! 俺の乳首コネコネしてくちゅくちゅ吸って、ケツまんこぐっちゃぐちゃにかき混ぜてよぉ…!!」

 理性をどろどろに溶かした須藤がそう叫ぶと、比嘉は吹っ切れたかのように須藤の乳首を摘まみ上げ、こねくり回し、ひっぱり、そこを吸った。

「ふぁぁああンっ、あああっ、ぁあ!」
「ほら、もうビンビンになってる…! ホント、淫乱だね…!」

 須藤の腰を掴み、ぐじゅぐじゅと激しく突きたてる。須藤の頭がピストン運動に合わせて揺れる。

「そんなに叫んだら人に気付かれるよ…!」
「いいのぉっ、ナオ、エッチだからそれも感じちゃうのぉ!」
「見られるの、好きなんだ?」
「しゅきぃっ! ナオ、エッチなの好きぃっ、ぁあああ!」

 比嘉は須藤の腰を繋がったまま後ろから持ち上げ、カパッと彼の両足を俺の方に向かってM字に開いた。所謂、御開帳だ。接合部分が丸見えなその状態は、男にまるで興味のない俺でも腰にくるものがあった。

「ほーら、直哉。坂井くんに見られたままイこうね」
「んひゃああああッ!!」

 持ち上げられたことでさっきまでと突かれる深さが変わったのか、須藤の喘ぎ声が大きくなる。

「あああっ、しゅごいッ!! きもちいィッ、あああっ!」
「悪い子、締め付けすぎだよ…ッ!!」

 比嘉は絶えず突きながら、須藤の尻を叩いた。その度に須藤の尻が赤く色づく。

「ぁああン、あ、ぁ、あああ! 智樹、好きィ!!!」

 比嘉は、一瞬動きを止めた。

 そして、口を須藤に近付ける。優しげな、恋人の顔をして。

「俺も好きだよ、直哉」

 いじわるしてごめんね。

 
 甘い、二人の空気に当てられながら俺は思った。もうなんでもいいから縄ほどいてくんねぇかな、と。







 第2ラウンドを始めそうな二人に頼みこんで、なんとか縄をほどいてもらった俺は、慌てて部屋から飛び出し、友人の部屋に戻った。二人の情事ですっかり下半身が高ぶってしまっていた。

 だから早くトイレに入っておさめようと思っていたのだが。

「坂井! 授業サボって何してたんだよ!」

 トイレ前に仁王立ちする友人。心配かけたのは悪かったから退いてくれねェかな。俺は友人を軽く睨みながらそう思う。

「服取りに自分の部屋行ってた。そこ、退いてくれ。急いでるんだ」
「ふぅん…?」

 友人の顔があの同室者の彼氏の表情に重なって見えた。まるで欲情しながらその相手を虐めようとしている、そんな表情。

 反射的にまずいと思った。警告音が頭の中に鳴り響く。

「服を取りに行ったのに、手ぶらなんだ…? 何、してたの?」

 教えてよ。

 耳元でそう呟くコイツはだれだ。

 俺は余裕がないのと、混乱とで訳が分からなくなる。

「同室者の情事を見させられてた…! もういいだろ、どけ!」

 押しのけようとしたその腕を掴まれ、俺は組みしかれていた。相手が上にいるという屈辱的な体制。友人は、色気をまき散らしながら左手で俺の腕を、右足で俺の脚を押さえつける。身動きが取れなかった。

「それで、こんなにしちゃったんだ?」

 友人が俺のズボンをくつろげ、下着を脱がす。現れたブツは、そそり立ちながらどくどくと脈打ち、どこかグロデスクなことになっていた。

 友人が、ス、と俺のブツを撫でる。思わず腰が跳ねた。

「エッロいな〜」

 友人は俺の反応を愉しむかのように俺のブツを扱き始める。

「…っ、っは、…ぁ」
「声、堪えなくていいよ」

 やだよ。俺にもプライドがあるんだ。扱かれながら何を、と思うかもしれないが自分の喘ぐ声を聞くことだけは耐えられない。

「……うるさいっ…、やめろ、さわんな…ッ」

 そんなところ人に触らせるような場所じゃない。気持ちよさに流されそうになりながらもそう言う。

「やだよ。俺がやりたいんだ」

 なんて勝手な。そうは思うが気持ちがいい。

「好きなんだ」

 初めて告げられた友人の気持ちに、俺は動揺する。友人は告白したことで熱が上がったのか、いっそう激しく俺のブツを扱く。穴に入り始めた指を止める気にならなかったのは、さっき見た情事があまりにも気持ちよさそうだったからか、それとも別の何かか。

「も…、勝手にすればいい」

 その日結局俺は流された。

 翌日、須藤に冬物の服を取ってきてもらったのは別の話だ。



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