BL短編
バカとビッチと変態と
 なるほど。これが視姦か。やけに冷静な自分がそう考える。まぁ、そんなこと考えていても喘ぐことしかできない訳ですが。

 俺、須藤直哉〈スドウーナオヤ〉は自分の寮部屋で彼氏の比嘉智樹〈ヒガートモキ〉を待っていた。無論、ナニをするためである。が、現在予定がちょっと狂っている。嘘だ。大分狂っている。

「おら、余計なこと考えてんじゃねえよ!」
「彼氏が見てんぞ! ほら啼け!!」
「ビッチはビッチらしくアンアン啼いて見せろや!!」
「やぁっ…! ぁあん、あぁッ!」

 うむ。喘ぎながら言うことではないんだけれども。俺は現在、初対面の男3人に犯されてます。もう一度言う。初対面だ。で、男の言葉から察したかもしれないが。目の前には彼氏がいる。で、見てる。無表情で。

 怒ってると思うだろう。普通なら。

 ちょっと違う。付き合っている俺だからこそ分かる。なにせあいつは極度の変態でマニアックプレイ大好き人間だから。あいつは、今『彼氏の前で犯される恋人』というシチュエーションを愉しんでいる。それは間違いない。多少の嫉妬をしていてくれたら嬉しいと思うのは惚れた欲目だ。



 もともと俺たちはセフレの関係だった。俺はビッチとして有名で、奴は爽やかなイケメンとして有名だった。俺には裏ファンクラブしかなくて、表立ったファンはいなかったけど、奴には正規のファンがたくさんいた。

 奴は尻軽な俺なら後腐れないから、という理由でヤりたくなると俺のところに来た。俺は不特定多数を相手にしていたから、ぶっちゃけ一人増えたくらいどうってことなかった。まさかお互いに恋人なんて関係になるとは思っていなかったんだ。


 付き合ってからは浮気はしなかったし、体を誰かに許したりもしなかった。俺が一途だからではない。寧ろ俺はかなり浮気性だ。

 ただ、奴が思っていた以上に絶倫で、実はセフレのときはかなり手加減していたらしいと知ったからだ。

 実際、セフレ時代にはマニアックプレイが好みとか知らなかった。ホント、青姦とか公開とか縛りとか、大好きだよね。飲み物に媚薬を混ぜてくるのなんか常習犯過ぎて笑えない。お陰で常に発情してるみたいで体が保たない。ビッチな俺がこの名に懸けて、いや、
 このナニに懸けて保証する。奴は変態だ。

 まぁ、俺もなんだかんだそれを愉しんでいる節があるから、結構お似合いなのかもしれない。



 いや。でもこれは…。流石にないわ。


「ぃやぁッ、あンッ、ぁ、ぁ、ぁ…」
「おら、出すぞ!」

 うん、すっごい見てる。比嘉が見ていることで感度が上がるのは事実だし、気持ちいのも確かなんだが、なんか罪悪感があってやりづらい。でも、気持ちよさに翻弄される自分に流され、俺は快感に目をつぶった。

「…ッ、何すんだよ!」

 くる、と思っていた精液の衝動は来なかった。代わりに聞こえた男の声。潤む目を無理やり開けると、比嘉が男のペニスの根元を握っていた。安心と、困惑がごちゃまぜになって何とも言えない表情になっているであろう自分を自覚する。

「いや〜。よがらせるのはオッケーだけど、精液ぶち込むのは頂けないな」

 今更何を、とも思ったが比嘉にも多少は俺に対する執着があったようで安心した。
 俺だってセックスは大好きだが好きな男の前で最後までヤられたくはない。背徳感で興奮したのも確かだけど、やっぱり体を繋げるのは好きな奴だけがいい。

「……おっせぇよ」
「だってお楽しみだったじゃん?」
「お前だって」

 いや。愉しかったけどね。でも嫌なモンは嫌なんだよ。矛盾してるけど。それでも。

「もうしないでよ、こんなこと…」

 多分、この3人の男は比嘉が呼んだんだろう。でなきゃこんなうまい具合に自分の部屋で初対面の男に犯される筈がない。第一、俺は部屋に鍵を掛けた。合鍵をもっているのは同室者と比嘉だけ。十中八九今回のことは比嘉の仕業だ。(因みに同室者は度々行われる俺たちのマニアックプレイに耐えかねて友人の部屋に逃げてしまった。
 まぁ、この学園ではよくあることだし、俺は全く気にしていない。同室者である自分の存在さえセックスのオカズにされる彼からしたら堪ったものではないだろうが。)


「うん、しないよ。案外気分のいいものじゃなかったしね」
「視姦の愉しさに目覚めたかと思ったよ…」
「目覚めたけど」

 あ、やっぱり? しれっと爽やかな顔でのたまう奴の顔を呆れた表情で見た俺は悪くないと思う。こいつ、どこまで変態度を上げたら気が済むんだ。レベル上げが半端ねぇぞ。

「第三者の存在は公開プレイでしか許せないなって分かった」

 公開プレイ、という言葉に一回同室者を巻き込んでやったセックスを思い出し、背筋がぞくりと震える。自分のペニスが硬くなるのを感じ、身を捩った。

「あれ。勃ったの?」
「うん」

 恥じらいがないよ、と即答した俺に比嘉は文句を言うが、俺は無視して比嘉の下半身に手を伸ばした。気が付けばさっきの3人は帰っている。まぁ、いても公開プレイが始まるだけだから別にいいんだけど。

 比嘉のズボンを下ろすと、既にヌメッていた。さっきの視姦プレイで勃ったのだろう。

「きゃ、えっち」

 冗談めかして比嘉が言うが、バッキバキに勃たせといてどっちが、という話だ。まぁ、結論から言うならどっちも、が正解かもしれない。うむ。

「ほら、足上げて〜」
「……さっきまでハメられてた俺に容赦ないな、お前」
「ハメられてたなら前戯はいらないでショ。ほら、いきますよ」

 雑な扱いに文句を言いながらも寝っ転がって足をひょいと上げる。ふと見ると比嘉のペニスがどす黒く脈打っていて、あんな凶暴なものをぶち込まれるかと思うとケツ穴がキュンキュンした。

「もうひくついてるよ。ほら、愛液も出てるし〜…。そんなに嬉しい? 俺のチンコハメられるの」

 比嘉が意地悪く俺に問うが、俺の頭の中は既にハメられることでいっぱいだ。来るであろう快感にただ貪欲になった俺は、理性を蕩けさせた。

「も、はやくぅ…ッ。きて…ッ。奥の方ガンガン擦ってぇ…!」

 焦れる俺は穴を指でくぱぁ、と開いて見せる。比嘉の目が更に欲情したのを見て、俺は満足した。そうだ、理性なんて捨て去ってしまえ。ただ本能のままに突いてくれればそれでいい…。

「っ、バカ…!」

 少しは優しくしてやろうと思ったのに、と呟いた比嘉は、その言葉を無にするかのように一気に俺を貫いた。脳がびりびりと痺れてバカになりそうだ。半開きになった口から唾液が零れた。

 「ひゃああぁぁぁん!! ぁ、あああ!!」

 泣きだしたいくらいに気持ち良くて、腰が揺れるのをどうしようもできないまま喘ぐ。比嘉の息が荒くなっているのに気付き、俺はいっそう気持ち良くなった。

「…ッ、締め付けすぎ…っ! 、はっ…ぁ!」

 比嘉の視線と俺の視線が絡み合う。そして、どちらからともなく濃いキスをした。唾液を交換し合って、舌を絡めて、吸って。ねっとりとしたキスで、軽く酸欠になる。

「んっ、ぁっ、はぁッ…!」

 獣のようにキスをし、ハメる俺たちは、一段落した後、繋がったままベッドに横たわっていた。

「もう視姦プレイは嫌だからするなよ!」

 念には念を、ということでもう一回言っておく。

「しないってば〜」

 比嘉の“しない”はその前に“今は”とか“暫くは”が隠れていることが多いから信用ならない。

「……せめて恋人の間はしないで。やるならセフレになったらにしてよ」
「セフレならいいの?」

 じゃあセフレに戻ろうか、と言われたらと不安にかられ、比嘉の腕にしがみつく。動いたことで中のペニスの角度が変わってかなり気持ちが良かったけど、嬌声をなんとかして呑みこむ。

「……俺が比嘉を好きな間は嫌なの」

 自分の気持ちに正直、かつ誠実な言葉をあまり口にしたことのない俺は、少し照れて比嘉の腕に顔を埋めた。なんだこれ。セックスに誘う言葉よりも恥ずかしいぞ。

「…可愛いこと言うよね、ホント」

 堪んないよ、と耳元で言われた俺は、恥ずかしくてたまらなくなり、後ろに少し身を引いた。期せずしてピストン運動に類似した役目を果たしたそれに、俺は今度こそ嬌声を上げる。

「誘うなよ。勃っただろ」
「……うるさいっ」

 さっきので恥じらいがまだ取れきれていない俺は、どうしようもなくなって八つ当たりをする。

「照れてる、可愛いな」
「もうホント黙れよ…」
「はいはい。じゃあ後はボディートークとしますか」
「こんの絶倫が…」

 さっき5ラウンドしたばっかじゃねぇか。そう毒づく間もなく俺は始まったピストン運動に喘がされる。

「ひゃあぁッ!! もっと奥突いてぇっ、ぁあン!」

 ……ま、別に愉しいからいいんだけどさ。



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