BL短編
ハッテン
 いつもの路地裏には、まばらに人がいた。その中に、黒いパーカーを着たがたいのいい男を見つける。フードを目深に被っており、顔は見えなかった。声を掛ける。

「おにーさん、俺の下で一発どお?」

 男は迷った素振りを見せるも、浅く頷く。そうと決まれば。俺は男の手を引き路地の奥へと進む。ガラクタが積み重なってできた壁と壁の間をするりと通り抜けると、少し開けた場所に出る。埃っぽさはあるものの、人通りの少ない、お気に入りの場所だった。

「ここでいい?」

 訊くと男はまた浅く頷く。顔も見えなければ声も分からない。それでもよかった。がたいのよさが好みにどんぴしゃだからだ。汚れた壁に押し付け、パーカーを脱がす。顔を見せないよう手で隠す男に、無性に情欲が煽られる。見るなと言われたら見たくなる。そういうものだろう。

 顔を覆う手の甲にキスを落とす。最初は唇を押しあてるだけ。次に唇ではむように。舌をそろりと覗かせ、指の間をちろちろと舐めると、男は観念したのか顔を隠すのを諦めた。意外なことが発覚した。男は、同級生の佐護(サゴ)だったのだ。佐護は手の付けられない不良として有名だった。そんな男がどうしてここに。

 問おうと口を開きかけ、やめる。佐護の顔を見れば問わずとも答えは明らかだった。息は荒く、唾液が口の端を潤している。ふるり、舌を蠢かす佐護に誘われ、口の中に舌を挿し込んだ。

 舌の裏から口の奥をなぞるように舌で擦る。佐護は快楽を求め、俺の舌に唾液を絡みつかせた。ぬるぬるとした感触が心地よく、へその辺りがぞわりと沸き立つ。

 やべ。勃った。

 うっとりとした様子の佐護から唇を離す。さみしそうに口を追おうとする佐護を押し止め、シャツを脱がせる。佐護は股間を庇うように腰をくねらせ、ズボンを腿の辺りまで下ろした。パンツの足を通す部分に指を挿しいれ、中が見えるよう布を引っ張る。俺に見えるようにして行われた一連の動作に、高揚するのを感じた。だってこれをしているのがあの、佐護なんだ。

 いかめしい顔で校内を闊歩し、気に喰わないと見ればすぐに当たり散らし、壊す。それが佐護だ。ただそこにいただけでも、彼の前では立派な罪になる。

 手を誇り臭い壁につけ、掌を汚した佐護は腰をつきだすようにして俺を見上げる。

「……も、」
「ハッ」

 ぱしん、と尻を叩くと「んぅ」という甘い声。変態が。にやり、口角が持ちあがる。へたり込みかけている佐護の耳に噛みつく。

「あ゛ッ、ぐ」
「……ね、いつもこんなことしてんの?」

 耳元で淵を舐めながら問う。佐護は背中を震わせながら吐息を堪え、答える。

「し、てる」
「いつもあんなに暴れるのは何で? お仕置きされたいの?」

 適当に言った言葉に、佐護はへにゃりと笑う。

「ぁ…ん、うん。それに……は、むらむらするのっ、ぁっ、我慢するとぉ…ん、イライラするからぁ……っ」
「そっかぁ、それは困ったねぇ」

 宥めるように頭を撫でると、佐護は首を傾け掌にすり寄った。うわ、ちんこにキた。ズボンが狭く感じるようになり、慌てて前を寛げる。佐護は待ちかねたと言わんばかりに俺のものに飛びついた。玉をやわやわと揉みながら、筋を口の中で扱いていく。幸せそうなその顔に欲情し、頭を掴み喉の奥でブツを擦った。ぐえ、と苦しそうな声が聞こえ、慌てて離れようとするも、佐護の手が俺の腰を掴んで離さない。佐護は苦しそうに目に涙を浮かべながら上から下まで喉で扱いた。

 俺の腰が震えたのを感じたのか、佐護が口を放す。ゆったりと誘うように腰を蠢かす佐護の穴に、俺は反りたったそれを押しあてる。

 ぐ、ぐぐぐ。

 徐々に中を開いていくような感触に、佐護の腰が反っていく。

「ひ、あ、あ゛あ゛ッん、あー、あー…っは、んんー…!」
「あと半分」
「んぁあっ、まっ、あ゛ー…すぅすぅ、する、ぅん…あああああ!」
「入った」

 パン、と尻を叩くと佐護の柔く反った中心から先走りが出る。

「あーっは、きもち、んん、はー…っあ、」

 へにゃり、壁に寄りかかる佐護の両手を掴みあげ、尻に腰を打ちつける。

「あああ!」
「なに休憩してんの。挿れたばっかで、しょっ!」
「ひああああッ!」

 うーうーと喘ぐ声を無視し、挿入を繰り返す。佐護の手は押し付けられた壁の埃に汚れ、次第にずり落ちていったズボンは彼の足を縛るかのような微妙な位置で止まった。足を開き快楽を逃がそうとする佐護は、自身が脱いだズボンによって喘ぎ悩んでいた。

 快楽を逃がそうと、佐護の尻は自然と誘うようにゆらゆらと動いた。壁に佐護の体を押し付け、突き上げるようにして挿入する。

「ば、バカになるぅぁ、ちかちかっ、頭ちかちかするっ! ひゃああんっ、ぁあーっ!」
「元々お前は馬鹿だよッ、オラッ」

 腰の震える感覚の後、射精する。佐護は「あー、あー」と短く喘ぎながらぐったりとしていた。壁を見ると白いものが付いていた。少し尿臭い。イきつづけたせいで抑えが効かなかったのだろう。へたりこんでいる佐護は、自身の呼吸の振動さえ辛いらしく、呼吸をしながら微かに喘ぎ声を漏らしていた。

「佐護」
「……はっ、あ…」
「またな」



 佐護は相変わらず周りに力を振りかざしながら校内を闊歩する。またムラムラでもしているんだろうか。でもまぁ、今日ばかりは無理もないかもしれない。手元にあるリモコンを強に設定する。先ほどまで顔を顰め歩いていた佐護の体はにわかにしなった。

 ふと、目が合う。

「……後でな」

 佐護は顔を俯け、そのうっとりとした視線を人目から隠す。そして一瞬体を震わせたかと思うと、そのズボンに小さく染みを作った。更にリモコンのダイヤルを強の方向に回す。佐護の体はびくびくと震えた。だらしなく快楽に緩みきった顔が周囲に晒される。先ほどまで不機嫌そうだった佐護の急な変化に周りは困惑する。

「イっちゃった。お仕置きだな」

 佐護の口がへにゃりと笑った。



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