しゅるしゅると額の糸を取る。ぱっくりと開いた五条貢の頭からは脳みそがさらけ出されていた。
「キッショ、なんで分かるんだよ」
『いや。頭御開帳してるやつの方がキショいだろ』
聞こえる者がいないと知りつつぼやく。生得領域は酷く退屈でもどかしかった。過去を洗いざらい聞き出したきり、俺に構ってくれなくなるんだから冷たいもんだ。いいのかよ、泣くぞ。
まぁ、俺が泣いたところで体の主は気にも留めないだろうが。そう思えるだけのことをこの体はしてきた。言ったじゃん、やるなら美化運動にしろって。なーに非術師転がしてンだよ。話が違う。
悟の顔がぎりりと歪む。俺の体を乗っ取った奴はにやりと口元を緩める。
「ああ、そうだ。ちょっとだけ貸してあげよう」
悟が耳を抑える。聴覚が戻ったのか。
「折角面白いこと教えてあげるのに聞こえてないんじゃあ、ねぇ」
嫌な予感がした。耳を塞げと叫ぶも、当然のごとく悟の耳には届かない。
「五条悟、オマエは五条貢が好きだったみたいだけどね。――俺はずっとオマエのことが嫌いだったよ
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ああ。
――ああ。
これが五感を借りていた悟の代価なのだろうか。ゆっくりと悟の目が見開かれる。空色の目はあの日と同じように俺を映した。
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