借りたものは返しましょう
5
 しゅるしゅると額の糸を取る。ぱっくりと開いた五条貢の頭からは脳みそがさらけ出されていた。

「キッショ、なんで分かるんだよ」
『いや。頭御開帳してるやつの方がキショいだろ』

 聞こえる者がいないと知りつつぼやく。生得領域は酷く退屈でもどかしかった。過去を洗いざらい聞き出したきり、俺に構ってくれなくなるんだから冷たいもんだ。いいのかよ、泣くぞ。

 まぁ、俺が泣いたところで体の主は気にも留めないだろうが。そう思えるだけのことをこの体はしてきた。言ったじゃん、やるなら美化運動にしろって。なーに非術師転がしてンだよ。話が違う。

 悟の顔がぎりりと歪む。俺の体を乗っ取った奴はにやりと口元を緩める。

「ああ、そうだ。ちょっとだけ貸してあげよう」

 悟が耳を抑える。聴覚が戻ったのか。

「折角面白いこと教えてあげるのに聞こえてないんじゃあ、ねぇ」

 嫌な予感がした。耳を塞げと叫ぶも、当然のごとく悟の耳には届かない。

「五条悟、オマエは五条貢が好きだったみたいだけどね。――俺はずっとオマエのことが嫌いだったよ

 ああ。

 ――ああ。

 これが五感を借りていた悟の代価なのだろうか。ゆっくりと悟の目が見開かれる。空色の目はあの日と同じように俺を映した。






(48/49)
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -