死亡扱いならもういいだろうと油断した。油断したせいで捕まった。
悟が星漿体にかかる任務に就いてうっかり死にかけたらしい。五条悟も死ぬ可能性があると当たり前のことに今更馬鹿どもは気付いたらしく、悟の報告に屋敷はてんやわんやだった。何をどうとち狂ったのか、遂には「悟様に命を差し上げろ」と俺に命令する始末。まァ当然、逃げたよね。でも捕まった。まさか十年以上も虎視眈々と命を狙われてるとは思わなかった。
生きるより苦しい地獄か、悟に命を受け渡すか。選選択肢はたったの二つ。後者を選んだ俺は、泣く泣くクリスマスイブに高専へ出向いた。無論極秘で。クリスマスのプレゼントは命の残基1個分なんてとんでもねぇサンタだ。ってか残基ってなんだ。この世はマ●オか、マンマミーア!
出向いた先、陰った裏路地には僧侶姿の青年が寝ていた。否、死にかけていた。母の死に際と光景が重なる。友達、なのだろうか。何事かを悟が告げるが、口元が見えずよく読み取れない。でもきっと悪い言葉じゃない。聞こえずとも、それは分かった。
悟が裏路地から離れる。青年が死んだのかと様子を見に行くと、かろうじてまだ生きている。
「……あ」
不意に、思いついてしまった。生きながらの地獄でも、悟様にお命献上サンタでもない、第三の選択肢だ。
「俺の命、オマエにあげるわ」
その代わり、いくつか君のものをもらっていくから。だってほら、わらしべ長者だって何かしらは渡してるワケで。
術式反転。
死にかけの青年をそっと探ると、何やら強烈な思想を抱いていることが分かった。……うーん。何もらったらいいかよくわかんないし、これを2欠片くらいもらっちゃいますかね。もらいすぎはよくない。
よし、対価はもらったから今度は順転。
お命献上いたしましょうねぇ。とはいえ、起きてすぐ横に死体があったらびっくりするだろうし、タイマーを設定しよう。24時。ちょうど日付が変わる頃にお命プレゼントだ。なぜなら俺はサンタなので。
「メリークリスマスってなァ」
そーらイエスキリストの誕生日とハイタッチだ。
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