五条の息子はストレスフルB
5
 里桜高校に帳が下りた。
 虎杖は行ってしまった。俯く伊地知さんの肩を叩く。

「まっ、俺に任せてよ。悟くんよりは弱いけどさ。伊地知さんの人助け、手伝わせて」

 虎杖を追い走りだす。だから聞こえなかった。

「虎杖くんを守るために、守りたい君が行ってどうするんですか……」



 呪いは今日も元気だった。
 他の音を掻き消すほどに悟様悟様と頭の中で騒ぎ立てる。いつもよりよく喋るのは俺の気持ちが挫けているからか。

「悟くん、会いてーなァ」

 一時期は代わりのように傍にいたセンセーも、最近はめっきり見かけない。伊地知さん曰く、悟くんはセンセーにご執心らしい。ニヤニヤと笑うセンセーの首に腕を回し歩いていたとかなんとか。

 ……もしかして、本物の家系図を見つけてしまった、とか。

 頭を振り、浮上した考えを掻き消す。それよりも、今は目の前の任務に集中だ。

「逃げろ順平!!」

 声が聞こえた。

「コイツとどんな関係かは知らん!! けど今は逃げてくれ!! 頼む!!」
「虎杖くん落ち着いて!! 真人さんは悪い人じゃ――」

 ぷつりと言葉が途切れる。

「悪い、人……」

 ツギハギの呪霊が吉野に歩み寄る。クソ、声は聞こえるのに距離が遠い。

「くら、えッッ!」

 バンと術式を撃ち放つ。呪霊の肩に穴が開いた。吉野に触れようとした腕はもろくなった肩からごろりと千切れ落ちた。

「わっびっくりしたぁ」

 間延びしたのんきな声。地面を蹴り距離を詰める。

「驚いていただけて何よりだ、よッ! おい吉野離れろ!! 邪魔ッ!」

 言いつつ蹴とばす。

「うわッ」
「五条!」

 よくやったとも蹴るなとも聞こえる呼びかけにひらりと手を振る。無事で何より。腕を再生したツギハギは、ぴくりと眉根を上げる。

「……五条? 君、五条悟?」
「あっは 目ついてるぅ? 雑魚過ぎて相手の力量も計れなかった? 悟くんはもっと強いですゥ」
「ああ君、五条悟じゃないのか。君ごときじゃ魂の方まで傷つけられない。君の負けだよ」
「おいおい審判張り切りすぎかよ。試合はまだ始まったばっかだろッ!」

 気が早い奴ってほんと嫌。例えば三歳児に体術施そうとする実家とか
 は〜いバンバン撃とうね〜! そーれバンバン。よいこらバンバン。

「だから効かないって!」

 ツギハギの腕が変形する。ブーメランのようになった腕は吉野を抱えた虎杖と俺とを弾きとばす。

「順平! 入口の方まで走れ! 早くッ!」
「させないよ」
「お前の相手はこっちだ、ろッ」

 後ろ髪を引かれた様子で走りだした吉野に、ツギハギが腕を伸ばす。撃った所から腕が弾ける。徐々に短くなる腕に痺れを切らしたのか、ツギハギの標的が俺に変わった。

「君、遠距離型かと思ったんだけどな」
「型にはまった生き方ってヤなんだよね

 実際にはハマりまくりだけども。

「君の術式、魂には影響ないけどッ、手数が多いから鬱陶しい、なッ」
「あっは お褒めに預かり恐悦至極!」

 苛立つツギハギは、背後の陰にも気づかない。
 そーら虎杖、チャンスだぞ

 虎杖の拳がツギハギを捉える。虎杖が次の拳を振り上げ、……あ。赤が噴き出す。

 ドドドッッ

 虎杖の腹に、穴。

「君じゃ俺に勝てないよ。さっさと代わんなよ、宿儺にさ」

 無為転変。






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