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ある日の生徒会室
 カタカタとキーボードを神経質に叩く音をBGMに相模は生徒会室のソファで本を読んでいた。槙田は今日も今日とて書類作成だ。リコール届は今だに出ていない。相模といえば最近は強情な槙田に絆されすっかり生徒会のサポートに回っている。

 槙田は書類が一段落したのか先ほど相模が淹れた紅茶に手を伸ばす。もうすっかり冷めているだろう。

 相模はそんな槙田を白けた目で見る。いつも出してすぐ飲まない彼を相模は不満に思っていた。槙田曰く自分は猫舌だからこれが一番おいしいのだそうだが、淹れたてが一番だと思っている相模は一向にその理由に納得していない。

 相模は再び読んでいた本に目を戻す。そして、あるところでふとページをめくる手を止めた。

「なぁ、槙田」
「んー?」

 槙田はパソコンの画面から目を離さずに返事をする。お茶を飲んで休んでいる間も仕事をしなければならないほど忙しいならやはりリコールをするべきだともはや日課になった小言を口にしてから相模は本題を切り出した。

「お前、セックスって何か知ってる?」

 ブフォッ

 お茶を噴き出す。あーあ、折角淹れたのにと相模は台拭きで後始末をした。

「おま、おま、それ、あれだろ?」
「どれ」
「……エッチなポーズのことだろ?」

 エッチとか久しぶりに聞いたなぁと現実逃避。本当に何で槙田家はこいつに実用性のない性知識を詰め込んだんだ。

 呆れるが至極まじめに言っているのだろうと思うと笑いの種にする気も起こらない。

「例えばどんなポーズなわけ」
「んん……んー、ちょっと失礼」

 ソファにふんぞり返りながら聞くと途端にマウントを取られる。両手を抑え込まれ、上に槙田がのしかかる。これ、は。

「こんなんとか……あとは、」

 今度は俺の腰部分に跨る槙田。これはまずい。何がまずいってなにがだろういや本当にこれはだめだ。

 混乱の末フリーズする。
 危なかった。本当に危なかった、主に理性が。

「じゃあさ、これは?」

 元気になりかけた息子を隠しつつ風紀検査で没収した成人向け雑誌を槙田に見せる。グラビアアイドルが水着でM字開脚をしている写真に槙田は目を覆う。

「あー…」
「おう」
「これは完全にセックス」
「完全にセックス」

 ひとしきり笑い終わったころには息子は治まっていた。よかったと相模は安心する。

 それにしても、だ。
 槙田の幼い性知識のせいですっかり頭から抜け落ちていたが彼だって高校生男子。人並みの性欲はあるのだ。

 彼が人並みの知識をつけてセックスが何たるかを知った時を思い浮かべ相模は人知れず背筋を震わせた。先ほどの光景はなかなか刺激的であった。治まったばかりの息子がまた少し元気になる。

 理性が持つうちに早急に正しい知識を教えなくては。軽率にポンポンあのようなことをやられては堪らない。相模は密かに決意した。




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