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晴れの日の魔法使い
『晴れの日の魔法使い』
「盛り塩一丁!」IF小説

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「ハロウィン? それで仮装ですか」

 馬鹿なんですか、と言う代わりにジト目でセンパイを見つめる。センパイは、俺が提案したわけじゃないぞ、と言い訳がましく付け加える。はぁ、と溜息を吐き手渡されたチラシを見る。

「校門で仮装してあいさつ運動って。風紀を正したいのか乱したいのか分かったもんじゃないですね。しかも押し付けられて仮装担当ですか。ウケる」
「笑ってる場合じゃないぞ。お前も仮装担当だからな」
「えっ、俺の仮装……見たいんですか?」

 頬に手を当て、上目遣い。センパイはうわ、と失礼にも悲鳴をこぼす。な訳あるか、と顔を顰めたセンパイは、しれっと言い放つ。

「道連れにするのに一番心が痛まないから」
「歴代風紀委員長の中で一番極悪非道な委員長ですよあんたは」
「ハッハ。構うものか。衣装の決定権は俺にある! お前の衣装も用意するのは俺だってことを肝に命じておけ」

 この野郎。なかなかにしたたかじゃないか。チクショウ、とこぼす俺にマーサははしゃいだ表情を見せる。

『いいじゃないか。学生っぽくて楽しそうだ。できるもんなら俺も仮装したいな』
「幽霊の仮装でもしておけ。俺は塩でも持って霊媒師の仮装するから」
「させるか」

 ぶぅ、と不満に唇を曲げる俺をしれっとスルーし、センパイはひらりと紙を出す。

「という訳で衣装を決める」
「せめて本人の了承取ってから話進めましょう?」
「やるだろ?」
「ヤるなんて。これだから思春期男子って嫌なんですよ。エロいことしか頭にない」
「バカ言え。魚沼、バニーの衣装がお望みか?」
「……割と真面目に聞きますけど、逆に見たいんですか?」

 一瞬真顔になったセンパイは、嫌なものを見たと眉間にシワを寄せる。答えることなくサラサラ、と紙に書き込まれた衣装に、俺は浅く頷いた。

 魔法使い ×2

「まぁ、妥当でしょうね」

 手軽そうだし。マーサは俺も俺も、と揶揄うように笑う。不意に思いついた俺は、風紀室の鏡にハァ、と息を吹きかけ指で霜を拭う。それらしいものを何とか描き終えた俺は、マーサ、と声をかけた。

「この鏡覗いてみ」
『ん? ケーチ、なん』

 言葉は途中で途切れた。
 鏡にあのは、霜で描かれた魔法使いの帽子と、それを被るように映り込んだマーサ。喉をつまらせたマーサは、へにゃりと不格好に笑った。

『ヘタクソ』
「うるせークソ幽霊。よくよくお似合いですよ」
『口が悪い』

 俺とマーサにしか見えやしないけど。
 マーサの笑顔に、絵の練習でもしようかな、と思わず独りごちた。




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