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嘘に揺蕩う
※時系列は無視してください。
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 嫌いだから、と言い放った牧田に、一瞬キョトンとする。そう、と返事をし、考える。

「……スカウトの件、やめた方がいいか?」

 小首を傾げ問うと、牧田は不機嫌そうに眉を顰めた。

「それだけ?」
「……、あぁ。クラス上げるのも、もうしなくていい」

 無理言って悪かったな。
 苦笑すると、牧田は沈痛そうな面持ちで項垂れた。

「……嘘」
「ん?」
「……嘘だから。嫌いって言ったの」
「? あ、そう」

 俺の頭をグリグリと乱暴に撫でる牧田に、なんだよ、と文句を言う。牧田はごめん、と短く謝罪した。

「エイプリルフールだったから、」
「んー? あぁ。それで」

 ごめん、びっくりしてやれなくて。へら、と笑うと、牧田はごめん、と謝罪を重ねる。

「慣れてんの?」

 何に、など聞かれずとも分かった。まぁ、と曖昧に答える。

「嫌いなんて、聞き慣れてる」
「……、」

 何かを睨みつけるように額に皺を刻む牧田。我が事のような反応をする牧田に思わず苦笑する。

「好きって言葉の方が、よっぽど嘘っぽい」

 来年はそっちにしてくれ。冗談めかし言うと、牧田は呆れ顔をし、溜息を吐く。くしゃくしゃ、と俺の髪を乱暴にかき混ぜると、牧田は目を細めた。

「それじゃ、嘘にならない」

 楽しそうに笑う牧田にギョッとする。先ほど騙し損ねたからやり直しをしたのだ、と遅ればせながら気付いた俺は、牧田に倣うようにそっと笑った。

「ダウト」
「……、せいかぁい」

 嘘つき、と笑うと、確かにねと牧田は眉根を寄せた。



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