5 エンジュ大会・中編

はぁ…
なぜかわからないけど、溜め息が出る。
ブンブンッと顔を横に振る。
ダメよ、今はコンテスト!!
集中しなくちゃ!
私は控室へと軽く走った。


+*+*+*


『エントリーNo,5 シュウさんです!!』

控室のテレビに映る姿は、シュウ。
いつものように、お辞儀をしてアピールに入る。

「バタフリー、Go!」

ボールから綺麗なりんぷんを羽ばたかせる、バタフリー。
アゲハントと同じ、ちょうちょポケモン。

「"ぎんいろのかぜ"!」

バタフリーの羽から、りんぷんを乗せた美しい銀の風が吹かれる。
バタフリーの周りが、銀色に染まる。

「その風に"サイケ光線"!」

バタフリーの目から出現する虹色の光線。
"サイケ光線"により、"ぎんいろのかぜ"の色に虹色が混ざる。
バタフリーの周りに幻想的な世界が現れる。

「すごいかも…」

つい声が出てしまうくらい、綺麗。

『銀色と虹色コラボレーション…素晴らしいです!!』

そして、シュウのアピールが終了した。
次に出てきたのは、

『エントリーNo,6 サオリさんです!』

美しいアピールを魅せるトップコーディネーター・サオリさんだ。
私の…目標の人。

「でてきて、ヤドラン」

ボールから出てきたのは、ヤドラン。
初めて勝負した時、サオリさんのヤドランは強かった。
もちろん、アピールだってすごい。
サオリさんから学ぶことは、たくさんある。
よく見ておかなくちゃ。

「"みずでっぽう"」

ヤドランの口から天井に向かって勢いよく、水鉄砲が発射される。

「その"みずでっぽう"に"サイコキネシス"」

するとヤドランの目が光り、水鉄砲が螺旋状にくるくると回る。
ゴクリッ…
綺麗な水鉄砲に思わず息を呑んだ。
さすがだなぁ…
いつも私の1歩先歩いている。
尊敬してます。

『螺旋状の水鉄砲に思わず見とれてしまいます!!』

こうしてサオリさんのアピールが終了した。


+*+*+*



『エントリーNo,12 ハルカさんです!』

いよいよ私の出番。
今回は強力なライバルがいるけれど。
ポケモンと楽しめば、大丈夫。
大丈夫だから。

「バシャーモ、ステージ・オン!」

ボールを高く宙に上げ、バシャーモを出す。
かっこよく出てきたバシャーモ。

「バシャーモ、"ほのおのうず"!」

バシャーモの口から、赤く熱い炎が吹き出される。
フィールドが炎に包まれる。

「その炎に"スカイアッパー"!」

ものすごい速さで炎にアッパーするバシャーモ。
その勢いで、鮮やかに、美しく散る炎。
さらにバシャーモを輝かせる。

『勇ましくも美しいバシャーモのスカイアッパー!カッコいいです!!』

ほぅと息を吐いた。
よかった、上手くいった。
緊張したから、心配だったけど大丈夫だった。

「ありがとう、バシャーモ。よくやったわ」

バシャーモに抱きつき私は喜んだ。


+*+*+*


ふっ〜…
控室に戻り、ベンチに座る。
なんとか上手くいったけど、大丈夫かな?
なんでだろう…
いつもの私じゃない。
強くない、むしろ弱い。
そうだ、あの時からだ。
シュウの顔を見た瞬間からだ。
ふいにカッコよく見えてしまった。
また考えると、さらに顔が赤くなった。
イヤイヤイヤ!!!
違う違う!!
なんでもないかも!!
ブンブン顔を横に振る私を、

「ハルカさん、大丈夫かしら?」
「なにしてんのよ、アイツは…」
「……」

心配そうに見ているサオリさん。
呆れて溜め息をこぼすハーリーさん。
無言で私を見つめるシュウに、私が気付くわけなく。

『お待たせしましたー!!厳しい審査の中から二次審査に進むのは…この8人です!!』

控室のテレビに、二次審査に進む8人が映し出される。
視線がテレビに移される。
その中には、サオリさん、シュウ、ハーリーさん、私が8人の中にいた。
よかった、二次審査にいける。
でも、

「これからが本番かも」

気合を入れるため頬をパチンと叩く。
…だけど。
赤くて熱い顔は、直らなかった。


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