2 エンジュシティでの再会


ボーッ……
汽笛の音が、エンジュシティの船乗り場に響く。
ちょうど、シンオウからの船がエンジュシティに到着した。
その船の中には…

「ジョウトに帰って来たかも」

シンオウから帰って来たハルカがいた。


+*+*+*


ハルカが荷物を持ち、船を降りた時、

「かーもちゃん!」
「ひゃっ!?」

正面からいきなり紫色のウェーブがかった髪を持つ男性から抱きしめられた。
その正体は…

「ハーリーさん!?」
「ミクリカップ見たわよー!アンタにしては、よくやったじゃない!」
「え…見ていたの?」
「全国放送されていたからね」
「三人で仲良くね」

するといつの間にか、ハルカの横に深緑の癖のある髪を持つハルカのライバルのシュウと、桃色のロングヘアーを持つサオリがいた。

「二人とも、いつの間に…」
「一緒にいたけどね」
「見えなかったかしら?」

ショウは呆れるように溜め息をこぼし、サオリはニコニコと笑っていた。シュウの態度にハルカは少し眉をひそめた。

「何よ。その馬鹿にしたような態度は」
「回りを見ていない君がいけないんだろう?まったく、相変わらず美しくないね」
「うるさいかも!!」
「まぁまぁ二人とも」

嫌悪モードの二人の間に、サオリが入り、口喧嘩をやめようとする。

「それよりハルカさん。その手にあるのは?」
「へっ?あっこれですか?」

ハルカの両手には、中くらいのサイズの紙袋があった。
紙袋のロゴには『SHINO-』と書かれている。

「皆にお土産を買ってきたんです」
「ホントにー!ハーリーすごく嬉しいかもー!」
「あら、ありがとう。ハルカさん」

ハーリーとサオリは本当に嬉しいようで、顔が緩んでいた。
一方シュウは、ハーリー達の態度と対立に不貞腐れていた。
いつものポーカーフェイスが少し崩れている。

「ハーリーさんとサオリさんには、『ユキメノコの恋人』!はい!」

ハルカが笑顔でハーリーとサオリにお土産を渡す。
先程の自分との口喧嘩も無かったかのように、ハルカの顔は笑顔だった。
―自分には滅多に笑顔を見せないのに。なのに、他人には笑顔を見せる。シュウにはこの事が少し、いいやすごく気にくわなかった。

「で、シュウには…」
「僕にもかい?」
「うん!当たり前かも!はい!」

当たり前。その言葉に今考えていたことが吹っ飛んだ。
まったく自分はハルカには甘いと感じられる。
これが…惚れた弱みというものだろうか。
少し頬が緩んだ。
ハルカから小さな袋を渡される。
花柄のモチーフの袋を丁寧に開ける。
中から出てきたのは…

「…ハンカチ?」

白地にレースが付いている、中くらいのサイズのハンカチ。
表の生地に、赤い薔薇の花の刺繍が入っているハンカチだ。
ほのかに薔薇の香りがする。

「それを一目見た瞬間、シュウっぽいと思ったの。どう?気に入った?」

目を細め、口に柔らかな笑みを浮かべるハルカ。
自分っぽい。
確かにそうかもしれない。ハルカに会うたびに僕は深紅の薔薇を渡してきたから。
本当は君に渡す…ということが直接出来ないから、君のポケモンに、って。
僕とハルカとの『あいさつ』なのかもしれない。

「ありがとう。綺麗だ」

心を込めて、お礼を言った。

「どういたしまして」

ハルカも微笑んでくれた。


*+*+*+



私は今、エンジュシティにある、オシャレなカフェにいる。
シュウ、ハーリーさん、サオリさんと一緒に。
サオリさんオススメのカフェで、昼食を取ることにした。

「ハルカさんは、リボンは今いくつ?」

先に注文していたレモンティーを飲みながら、サオリさんが尋ねてきた。
その姿がもう…絵になっている。
いつ見ても、サオリさんは綺麗だ。
本当、羨ましい。

「私は今、3つです」

私はチェリーティーを飲みながら答えた。

「3つ!?あらかもちゃん、アタシもよ」
「そうなんですか?」

もっと集めていると思っていた。
一人旅をして、多くの事を学んだ。
食事管理や、タウンマップ、そしてなにより…一人なんだということ。
今までの旅は、サトシ、マサト、タケシが一緒だったから。
皆でしていた事を、全部一人でしないといけない。
それが当初は本当に…辛かった。
私は皆に頼ってばかりだったと改めて気づかされた。泣きたい。もう嫌だ。
何回も思った。…けど。
私を救ってくれたのは……パートナーの皆、家族、…ライバル。
ポケモン達が一緒にいてくれたから、コンテストも頑張ろうと思った。
時々連絡をくれる家族。
コンテスト会場で会う、ライバル達と競うからこそ。私は、負けていられない。本気でそう思った。
ハーリーさんもその一人で。
いつも私に意地悪なことをするけれど、ライバルとして凄い人。
だからかな…なぜか嫌いになれない。
…何回も騙されているけれど。

「あら、ハーリーさん3つなのね。私は今4つよ」
「キーッ!なによ、余裕かませちゃって!!ムカつくかもー!」

この二人のやり取りに少し笑った。

「シュウは?今リボンいくつ?」
「僕もサオリさんと一緒で4つ」
「あらシュウ君も!?ますますムカつくかもー!!」

ますます機嫌が悪くなるハーリーさん。
その様子をニコニコと笑顔のままのサオリさん。
コーヒーを黙々と飲むシュウ。
個性あるメンバーだなぁ…と改めて思った。

「そうだ、ハルカ」

ふいにシュウが、私に話しかけた。
いつもは私からシュウに話しかけるのが多い。
彼からは少なく、珍しいことだ。

「何?」
「一週間後にあるエンジュ大会は出場するのかい?」
「へ?」

エンジュ大会?

「え…エンジュでコンテストがあるの!?」
「知らなかったんだね」
「う…」

返す言葉が見つからない。
これが図星というやつかも……

「シュウ君も出場するの?私もよ」
「アタシも参加するのよ♪」

私達の話を聞いていたのか、二人はさらっと言った。

「ハーリーさんもサオリさんも?」

知らなかった…
私はミクリカップの事で頭いっぱいだったから。
うーん…と考えていると。

「で、ハルカは?」
「へ?」
「へ?じゃないだろう?君はコンテストに出場するのかい?」

シュウが不敵に笑う。
あ…そうだった。
今の話題はコンテストだった。
シュウ、ハーリーさん、サオリさんの視線が私に集まる。
私の答え。
ミクリカップでは、負けてしまったけど。
だけど。
…パートナーのポケモン達を信じていけば。
誰にだって、負けない気がする。
皆を見て、一言言った。

「もちろん出場するかも!!」

カフェに、勇気ある声が響いた。


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