31 電撃波


※怪我描写あり


チョウジタウンを出発して、一週間が過ぎた。
私は今チョウジ付近の森で、コンテストのトレーニングをしている。

「エネコ、"でんげきは"!」
「ネー…ネーッ!」

エネコの尻尾が眩い光で輝く。
だが、その光はだんだんと消えていった。

「あちゃー…また失敗か〜…」
「ネー…」

エネコの耳と尻尾が垂れ下がる。
私はエネコと"でんげきは"の技を練習している。
電撃の技は、激しく光りながらも、綺麗に輝く。
サトシのピカチュウの"じゅうまんボルト"など、強く激しくても光り輝いていて綺麗だった。
だから取り入れようと思ったけれど、私はでんきタイプのポケモンを持っていない。
だけどエネコがでんき技を覚えれるから、"でんげきは"を覚えようとトレーニングしているけど…

「なかなか難しいかも〜…」
「ネー…」

ガクッと、私は項垂れてしまった。
エネコはトレーニングに疲れたようで、地面に寝転がっている。

「…ごめんねエネコ。パートナーの私がしっかりしないといけないのに……」

エネコは"でんげきは"を覚えようと頑張ってくれているのに。
エネコは、悪くないのに。
私がコーディネーターとして…―パートナーとして知識不足だ。
すると微かに、私の瞳が何かで霞んだ。
涙、だ。
泣きたく、ないのに。

「ネ!ネッ、ネー!!」
「!エネコ…」

エネコは私に"泣いちゃダメ!!"と言うように鳴いた。
…そうだ。私が弱くなってどうするの。
パートナーがしっかりしないと、ポケモンが困ってしまう。
ポケモンを―私達の絆を信じなくちゃ。
エネコも"ふぶき"を覚えるまで時間かかったけど、ちゃんと覚えれた、上手く使えるようになったじゃない。
エネコは…出来る。

「よしっ!エネコ、トレーニング再開よ!」

涙を拭って、力強くエネコに、―自分に言った。

「ネ―――ッ!!」

エネコも"うん!!"と力強く応えてくれた。



*+*+*+



「ふっー、今日はここまで!」
「ネッ!」

もう少しでエネコも"でんげきは"を完全に使えるようになってきている。
小さな電撃を扱えるようになってきた。
このままトレーニングを重ねていくと…いける。

「!そうだ!」

でんきタイプのポケモン持っている子、いた!
その子に相談して、"でんげきは"について聞こう。
そう思い、私はポケナビの電話機能を押した。
この時、私は気付かなかった。

エネコが――"でんげきは"を練習していたことに。



トゥルルル…トゥルルル…カチャ

『はい、もしもし?』
「ハルカです。サファイア元気ー?」
『ハルカ!元気とよー!』

ミナモシティで出会って友達になった子―サファイアに久しぶりに電話した。
あははと笑い合う私達。
おっと。話し合って忘れる前に、本題に入らなくちゃ。

「サファイアってさぁ、マイナン持っているよね?」
『うん、そうとよ?…あっ、マイナンったい!』
『マイー!』

マイナンの可愛くて元気な声がポケナビ越しに響いた。
一度野生に戻したらしいけど、また手持ちとして一緒にいるらしい。

「私、エネコに"でんげきは"を覚えさせようと思っていて…」
『ふんふん』
「なんかコツとかを教えてほしいんだけど…」
『それなら、あたしがマイナンと直接ハルカの所に行って教えるったい!』
『マイ!』
「えっ!?」

なんとサファイアは直接指導してくれるという。

「い、いいの?ホウエンからジョウトって結構距離あるよ?」
『大丈夫ったい!とろろに乗って行くけん』
「ほ、本当にいいの!?」
『もちろんったい!ねっ、マイナン?』
『マーイ!』
「ありがとう、サファ…「ネ―――ッ!!」…えっ」

え…エネコ!?
エネコの声が聞こえた方へ急いで見ると…

「…!!!」

大きな木が、――エネコの方に倒れてくるではないか。
このままでは…エネコが木の下に倒れてしまう。



―――エネコが危ない!!!


「エネコ!!!」
「ネーッ!!」

急いでエネコの元へ走って、抱き上げて逃れようとするが…
どんどん木が私達の方へと倒れていく。
このままでは、逃げられない。
ならば私がすることは…これしかない。
私は、エネコが木の下敷きにならない距離までエネコを投げた。



「ネッ!ネ――!!」
「…っ!!!」



―――左足に、激痛が走る。



「いやぁぁぁぁぁ!!!」



痛い。痛いなんてもんじゃない。
まるでプツリと、筋が切れたような感覚。


『ハルカ!ハルカ!!大丈夫ったいか!!?』


ポケナビ越しに響くサファイアの声。
エネコが急いで私の元にポケナビを持ってきてくれた。

「サ、ファ、イア…」
『ハルカ!!どぎゃんしたと!?』

サファイアの、涙を我慢するような声。
今精一杯の力で、言った。

「チョ、ウ、ジ…付、近…の森…にい…る、から…」
『わかったと!!すぐに行くったい!!待っといて!!!』
「ネ…ネーッ…」

エネコの目から、大量の涙が溢れ出る。
私はその涙を…ゆっくりと拭った。

「ダメ…でしょ…う?泣、いちゃ…ダメ、よ………ね?」
「!!」

私は、パートナーのあなたを助けたのよ?
あなたが無事なら、それでいい。

そんなハルカを見て、エネコは涙が止まった。
―"あぁ、なんてハルカは強いんだろう"。
エネコは、ハルカの頬に何回も頬ずりをした。

「くす…ぐっ、たい…よ…フフッ」


"痛いのに。すごく痛いのに。ごめんね。本当にごめんね。"


そう心の中で、エネコは何回も呟いた。



ボールからバシャーモを出し、急いでハルカから木を退ける。


―この時、私はもう意識が無かった。


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