27 大丈夫だから
「ハルカ!」
「リオ!すごく綺麗だったよ」
「サンキュ―。成功してよかった―」
ホッと安堵したように見えるリオ。
今のところ、リオが一番いい演技を魅せている。
リボンを3つ持っているんだもの、実力があるはず。
ライバルが増えて、私は嬉しい。
もっと強くなろうって、今まで以上に思えるから。
「次ハルカだな。頑張れよ!」
「えぇ」
リオに手を振り、私は控室を出た。
「…!」
「やぁ」
控室を出た瞬間、驚いた。
観客席にいる筈の彼―シュウが目の前に、腕を組んで立っていたから。
「どうしてここに?」
「君に言うことがあってね」
「私に?」
何を?と聞こうとした時、シュウがゆっくりと私の傍に来て私の耳に寄り添った。
ち…近い…っ!
いきなりの彼の行動に、驚きが隠せない。
私の思考は、シュウの行動で一時停止した。
まず、彼が私に近づくとか、そんなの今までなかったのに。
しかも、至近距離で。
そう考えると、顔が熱くなるのを感じる。
ど、どうしよう…っ!!///
あたふたする私を見ているシュウが、
「ベストを尽くせば大丈夫だから」
優しい口調で小さくポツリと呟いた。
――大丈夫だから――。
そう言ってシュウは私から離れた。
…なんでだろう。
今まで焦っていた気持ちが、落ち着いた気がする。
負けられない。という緊張感が、一瞬で消えたような。
…一時シュウのことで焦ったけど;;
だけど、勝つという自信がどんどん湧き出てきた気がする。
「えぇ、楽しむわ!」
笑顔をシュウに向け、私はステージへと足を急いだ。
最高の演技を、魅せましょう――!
「…積極的だな、シュウ」
ハルカを見送っていると、突如後方から声が響く。
この低い声は、見なくてもわかる。
僕の"ある意味"のライバルだから。
「…ハルカは鈍感だからね。このぐらいしないと気付かないさ」
ポーカーフェイスを保って、彼に言う。
彼…リオは不敵に笑っていた。
「そうだよな…。なんであんなに鈍感なんだろう?」
呆れるよな、と苦笑いするリオ。
「そういう君も、その鈍感なハルカが好きなんだろう?」
フッと口角を上げて笑う。
すると彼は驚いた顔を一瞬したが、すぐにニッと笑った。
「あぁ、お互いな」
彼も結構しぶといなと思う。
僕と火花を散らす。
「君にハルカは渡さない」
真剣な眼差しを送ると、彼も真剣な目つきへと変わった。
「こっちの台詞だっつーの」
少し睨みあって、僕はその場を去った。
渡さない。
絶対に他の男に渡さない。
僕の初めての恋。
初恋は叶わないなんて、そんなの関係ない。
ハルカは僕の最初で最後の好きな人。
君が、すごく恋しくて愛しい。
笑った顔、コンテストを楽しむ顔、好きな物を見つけた時の幸せな顔。
明るいところ、優しいところ、…時々弱いところも。
細いサラサラの髪、大きな青色の瞳、薄いピンク色の唇も、全てが愛しい。
ハルカ、知らないよね。
こんなにも僕は、君のことが好きなんだ。
胸が苦しくなるよ。
だから…さ。
僕の気持ち、伝えたいんだ。
だけどまだ勇気がないから…もう少し、待って。
君が…好きだから。
この気持ち、嘘じゃないから。
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