26 強敵
チョウジ大会、当日。
コンテスト会場の近くの広場で、私は最終確認をしていた。
エントリーは先ほどやってきたので、今はコンテストのことしか頭に入らない。
「ハルカ」
…そんなの、嘘。
あなたの声を聞いただけで、あなたのことで頭がいっぱいになる。
集中しなくちゃ、いけないのに。
「なに、シュウ?」
声がした方へと振り向くと、そこにはいつものシュウの姿。
こんな時に、どうしたんだろう?
すると、シュウが私にゆっくり近づいて…
「今日のコンテスト、頑張ってくれたまえ」
「…!」
ポンッと私の頭を撫でたシュウに、私は今何が起きているのかわからなかった。
次第に、顔が熱く赤くなっているのがわかる。
い、いつものシュウじゃない…っ!
好きな人にこんなことをされたら…
「〜っ!!わかっているかも!///」
心臓が爆発する、絶対。
どうしてくれるの。
頭が混乱している。
なんだかその場にいられなくなって、私はシュウから逃げるようにその場を走り去った。
そんな私の様子を見ていたシュウが…
「…可愛すぎだ」
とか言っているなんて、想像もつかなかった。
*+*+*+
「さぁ始まりました、ポケモンコンテスト!今回は少し気候が寒いチョウジで開催します!」
元気よくルルアンさんが説明する。
「今回のコンテストは、ダブルバトルで行われます!一匹より難度が高いですが、二匹でより完成度が高くなると思われます!コーディネーターの皆さーん、素晴らしい演技を期待しています!頑張って下さい!!」
ワァ――ッと会場が盛大に沸く。
そう、今回はダブルバトル。
グランドフェスティバルもダブルパフォーマンスがあるから、そのための練習も兼ねて。
絶対に、5つ目のリボンゲットするんだから!
「ハルカ!」
「リオ!」
「始まったな―」
「えぇ」
私達は控室にいて準備中。
控室に備えられているテレビで他のコーディネーターの演技を見ている。
どのコーディネーターも綺麗に決めてくる。
「次、俺だ」
「頑張って!」
「おぅ!」
パチンと手を合わせ、控室を出るリオを見送った。
しばらくして、リオがステージに出てきた。
『エントリーNo.8、タンバシティのリオさんです!』
ルルアンさんがリオを紹介する。
リオって、タンバシティ出身だったんだ。
じゃああの時は、まだ旅に出ていなかったのかな?
そう考えているうちに、リオの演技が始まった。
「ネイティオ、キングドラ、スタンバイ!」
2つのボールを高く上げ、華麗にボ−ルから飛び出してきたポケモン。
ネイティオにキングドラ…
初めてブラッキー以外のリオのポケモンを見た。
強そうなポケモンだ。
それに、二匹とも艶があって綺麗。
ポロックをよく調合したのだろう、とても輝いて見える。
「キングドラ、"バブルこうせん"!」
キングドラの口から無数の泡がふわふわと宙に浮かぶ。
「ネイティオ、"あやしいかぜ"!」
ネイティオの羽から紫色の怪しく光る風がキラキラと吹かれる。
無数の泡に、輝きが増す。
「ダブルでその泡に"シグナルビーム"!!」
二匹から素早い虹色の光線が泡へと撃たれ、直撃する。
泡が割れ、まるでオーロラのような幻想的な世界が広がる。
『なんと!"バブルこうせん"に向かって撃った"シグナルビーム"により、オーロラが出現しました!美しくもパワフルで素晴らしいです!!』
ワァ―――ッと盛り上がる会場。
リオ…こんな見せ方をするんだ、すごく綺麗。
こんなにも強敵だったなんて…
大丈夫かな…
私の心が、焦り出すのを感じた。
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