23 いつもの

「な、んで…」

あたしはすごく動揺している。
目の前に会いたい彼、ルビーがいるからだ。

「それはこっちの台詞」

あたしを睨んで、ゆっくりと近づいて来た。

「ちょっと来て」
「ちょ!?」

無理矢理腕を引っ張られ、一気に距離が近づいた。

「RURU、テレポート」

ルビーの手持ち、キルリアのRURUちゃんのテレポートで、あたし達は瞬間移動をした。



*+*+*+


〜秘密基地〜
一瞬で秘密基地に着いた。
ここに来るのは久しぶり。
ルビーがここにいると思ったから、ずっと来ていなかった。
…いいや、来れなかった場所。
会いたくても会えなかったから。
ルビーはあたしの腕を掴んで、秘密基地へと入っていく。
もちろん、あたしも。
そして強制的に備え付けられいているソファーに座らされる。
ルビーの顔…すごく怒っている。

「僕、何かした?」

強い口調と真剣な眼差しで問われる。

「何かしたなら言ってよ。サファイアに避けられると…寂しいんだよ、悲しいんだ」

すると今度は悲しそうに眉を下げた表情に変わり、見つめられた。
まるで裏切られて、悲しそうに泣く子供のような瞳で。

「…っ」
「お願い、サファイア。聞かせて?」

その顔を見つめることが出来なくて、思わず俯いてしまう。
泣いちゃダメ。
泣きたいのは、ルビーなのに。
答えなくちゃ。
あたしはすぅと息を吸って、ルビーの紅色の瞳をまっすぐ見つめた。

「あん…ね」
「うん」

あたしは少しずつ、出来る限り言おうと勇気を振り絞った。



「あたし…怖かったと」
「怖…かった?」

ルビーがどうして、というような顔であたしを見つめる。

「あたしは…あんたといつも口喧嘩してばっかりやし、すぐ怒るし、…素直じゃなくて女の子らしくなくて可愛くもない」
「…」
「こんなあたし、ルビーの傍にいても、ダメじゃないかって……。ルビーの傍にいていい理由がないから、ルビーから離れようとした。連絡も取らなかった。極力会おうとしないようにしたと。…ルビーの隣に、あたしがいちゃいけ……」

そこで、言葉が途切れた。
ルビーが…あたしの頭を自分の胸に押しつけて、二つの細くしっかりした腕であたしの体をギュッと強く抱きしめていたから。
え…
なんであたし、抱きしめられているの?

「離し…」
「ホント馬鹿だよね。サファイアは」
「はっ!?」

いきなり馬鹿と言われ、つい大声を出してしまった。
反発しようとしたけど、何言っても返されるから諦めた。
黙ってルビーの話を聞くことにする。

「なんでそんなこと考えるの?確かに僕達は多く口喧嘩する。だけど、それは自分の意見を言っているってことでしょ?僕はそうやってサファイアと話したり言い合ったりするのが楽しいんだよ。それと、君は他の女の子より全然可愛い」
「なっ!///」

さらりと「可愛い」と言うルビーに、あたしは思わず顔が赤く熱くなってしまった。
なんでこんなにも恥ずかしい台詞をさらりと言えるのだろう、この人は。

「それに…」

抱きしめる力が少し緩まり、ルビーの紅色の瞳があたしの藍色の瞳を優しく見つめた。


「僕はサファイアの隣にいたい」
「え…」

ポカンとするあたしを、ルビーはクスッと笑った。
その妖美な笑みに、思わずドキッとする。

「君といるとすごく楽しいんだ。毎日がカラフルな世界のようで。いろんな色の世界が見れるんだよ。僕は新しい色をサファイアと見つけて一緒に見たい」

さっきの悲しそうな表情は無くなり、明るく楽しそうに笑うルビーに思わず、

「…フフッ」
「あっ、サファイア今笑ったね?ここ真面目なところなのに…」

はぁと呆れたようにため息をつくルビーは、表情がコロコロと変わって。
いつものポーカーフェイスの彼じゃないみたいで、思わず笑ってしまった。
すると、また真剣な表情に変わって。

「だから、隣にいて。サファイア」

そう一言、紡いだ。

「…うんっ!」

だからあたしも精一杯の笑顔で答える。
そんなの、当たり前。
なんでこんなことで悩んでいたんだろう。
喧嘩したって、仲直りすればいい。
少しずつ少しずつ、素直になれたら。
あんたに、伝えたい。
あんたに対する、このキモチ。
だから…

「ルビー、今からフィールドワーク手伝ってほしか!」
「しょうがないな。今日だけだからね?汚れちゃうから」
「あんたは本当に汚れるの嫌いったいねー」
「君こそもう少し綺麗にしてみたらどうなんだい?まったく野生児なんだから…」
「もう、せからしか!」

いつものこのやり取りを。
いつものこの会話を。
いつものこの思いを。
大切に大切にしていこう。
あたしはそう胸に、強く刻んだ。



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