20 甘い熱

「どうしよう…」

一人になってしまった。
ポケナビもポケモンセンターの部屋に置いてきてしまった。
だから連絡が取れない。
慣れない下駄で歩くから、いつもより速度が遅い。
私はトサキントすくいの前に立っていた。
人が多すぎて、全然前が見えない。

「助けて…シュウ…」

シュウ、ごめんね。
あなたの名前を呼ぶことしかできなくて。
すぐに捜したい。
隣で歩きたい。
シュウ…シュウ…
私はその場に座り込んでしまった。
涙が視界を遮った。

「ハルカ!」

ほら、あなたの声が…
聞こえている気がす…えっ?
顔を上げてみると。
いつもの姿と対立に、汗だくのシュウが私の方へと走ってきた。
そして私の目の前で立ち止まり、膝に手を当てハアハアと息を切らしていた。
シュウ…私を捜すために、そんなに汗だくになったの?
すると、シュウが私の目を見た。
その目は、迷子になった子供を捜すように、心配したようで悲しそうだった。
私は涙が溢れていたけれど、シュウの目を見つめた。

「よかった…無事で」
「ごめんなさい…っ目を離した瞬間、いなくなって…」

私の目からまた涙が溢れた。
そして俯いてしまう。
弱いな…私。
強い私でいたいのに。
特に、あなたの前では。
なんでいつも思い通りにいかないんだろう。
溢れる涙を手で拭おうとした時、
私の体が揺れた。

「え…」

最初に何が起きているのかわからなかった。
だって…シュウが私を抱きしめたから。
優しく、だけど強く。
細い体なのに、しっかりとした体つき。
やっぱり男の子なんだと感じられる。
…って、感心している場合じゃない!!

「シュウ…あの…///」
「ごめん、1人にして…」

またそんな優しい声で言われたら…
胸が苦しくなる。
やっぱり私…あなたのこと好きなんだって感じられる。

「ううん、大丈夫」

シュウの顔を見て、笑った。

「シュウが来てくれたから、もう大丈夫」

シュウを見てみると、優しく微笑んでくれた。



*+*+*+



「…落ち着いた?」
「うん…」

神社の階段。
人が少ないこの場所に私達は今いる。
あの後少し泣いてしまった。
おかげで目が赤く腫れている。

「はい。…はい、大丈夫です」

シュウはサオリさんに電話している。
ハーリーさんとサオリさんも私も捜してくれたみたい。
皆に迷惑をかけてしまった。
するとピッと電話が切れる音がした。
音がした方向を見ると、電話を終えたシュウの姿。
そして階段に座っている私の隣に腰掛けた。
どうしよう…!
胸がドキドキとうるさい!!
すぅ…と落ち着かせるために息を吸った。

「お腹空いたな」
「え?」

突然シュウが口を開いた。

「もう一度屋台に行っていいかい?」
「でも、また逸れるかもしれないし…」

心配そうに言う私を見て。
シュウは優しく笑った。

「こうすれば、逸れないよ」
「ッ!!」

するとシュウは私の手を優しくギュッと繋いだ。
ちょっ、ちょっと待って!!
手を繋ぐ、なんて。
私の心が爆発しそう!!
…だけど。
私の心が嬉しいと言っている。
心は嘘つけない。

「何食べるの?」
「たこ焼き」
「シュウもたこ焼き食べるんだ」
「僕だって食べるさ」
「あはは、ごめん」

そう言って、笑う私達。
その姿は、まるで。
仲良しな、恋人みたいで恥ずかしくなった。
一緒に歩いてみたい…本気でそう思った。
夜空に、明るい花が咲き乱れた。


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