17 リオ
『会場のみなさーん、こんにちは!ポケモンコンテスト・タンバ大会!始まりまーす!』
ルルアンさんの声が会場に響く。
修業の成果を精一杯だそう。
私は師匠からの課題「心を無」にすることは、完全にできていない。
精神統一をしてもあまり効果がでない。
どうしたらできるんだろう…
一人ベンチで座って考えていると、
「あっ…もしかして“ホウエンの舞姫”?」
えっ?
誰か私のこと呼んだ?
キョロキョロと周りを見回すと。
目の前に、茶髪で癖っ毛の男の子が立っていた。
誰だろう…?
「初めまして、俺リオっていうんだ。あんたの演技を観てファンになった」
「えっ!?あ、ありがとう」
ファンになった。そう言われると恥ずかしい。
少しばかり、顔が熱いのがわかる。
手で顔を覆う。
するとリオから手を差し出された。
これは…握手?
「よろしくな」
「うん、よろしくね」
リオの手は、大きかった。
男の子って、こんなに大きいんだ…
ぼーっとしていると、
「ハルカ?」
「へっ?あ、ごめん」
リオから名前を呼ばれて気を取り戻した。
「俺のことはリオって呼んでいいから。ハルカって呼んでいいか?」
「うん。リオはコーディネーターなの?」
「あぁ。だけど今日のコンテストには出ない」
「えっ、なんで!?」
「まだコーディネーターになったばかりだから、見て勉強しようと」
「そうなんだ」
少し残念だ。
リオのポケモン達のコンビネーションを見たかった。
そう思っていたけど、リオの右下に黒いポケモンがいた。
「その子…」
「ん?あぁ、俺の一番の相棒のブラッキーだ」
「ブラッ」
ブラッキーは私の前に来て、お辞儀をした。
礼儀正しいかも。
リオのブラッキー、毛並みがすごく綺麗。
丁寧にブラッシングをしている証拠だろう。
とても輝いて見える。
「じゃあ頑張れよ。見ておく」
「うん!」
リオとブラッキーは会場の中へと入っていた。
今日のコンテストで絶対に4つ目のリボンゲットするんだから!
私は気合を入れ、頬を叩いた。
*+*+*+
「さすが"ホウエンの舞姫"…圧勝だな」
「ちょっ、何回もその名を呼ばないでほしいかも!!///」
今私はリオと海辺に来ている。
その名は本当に恥ずかしい…///
思わず悪態をとってしまう。
今日のコンテストは強い人があまり出場していなかったため、すぐに勝つことができた。
4つ目のリボン。
少しずつだけど、調子を取り戻している。
ぎゅっと、拳を握った。
「俺、絶対にグランドフェスティバルに出場するからさ…その時は、俺と勝負しようぜ!」
ビシッと効果音が出るように、リオは私に人指し指を差した。
「その挑戦状、受けて立つかも!」
「おう!じゃあまたな!」
そう告げてリオはブラッキーと共に走り去った。
まるで嵐が去ったかのように。
私はずっとリオを見続けた。
「コンテスト、お疲れさん」
突然、後ろから声がした。
この声主は…
「師匠!」
「技のキレやパワーがついていたぞ。修行の成果が出たな」
「ありがとうございます。師匠のおかげです」
「いいや、ハルカが一生懸命したからだ」
ワッハッハッと笑う師匠。
私もつられて笑った。
「…もう行くんだろう?」
突如、師匠の顔から笑みが消えた。
私も笑えなくなった。
師匠が悲しそうな表情をしていたから。
そうだ、私はコーディネーター。
次の町に行かないといけない。
「はい…」
「君なら必ず素晴らしいコーディネーターになれる。気をつけて行ってきなさい」
「…はい!ありがとうございました!」
もう私の顔はグチャグチャ。
涙で溢れている。
師匠に別れを告げて。
私は懸命に走った。
次の町へと、思いきり。
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