16 心

師匠に弟子入りをして、一週間が過ぎていた。
ちょうど一週間後に、タンバ大会が開催される。
私は朝・昼は修行、夜はコンテストの練習。
ポケモン達の技に、少しキレやパワーがついているのを感じた。



*+*+*+



「バシャーモ、"スカイアッパー"!」

高く跳び、勢いよくアッパーを繰り出すバシャーモ。
炎が無数に飛び散り、バシャーモ自身を輝かせていた。

「その調子よ、バシャーモ」
「なかなかいいアッパーだな」
「師匠」

いつの間にか後ろには師匠がいた。
月の光が、私達を照らす。

「修業をしてこんなに早く成果が出る弟子は初めてだ」
「そんな…私はまだまだです」
「確かにそうかもしれん。しかし、技のキレなどはよくなったぞ」
「ありがとうございます」

褒められるとなんだか恥ずかしい。
少しだけ認められたってことが素直に嬉しい。

「あとはな…」

師匠が月を見上げながら、こう言った。

「一度、心を無にしてみろ」
「心を、無…?」
「例えばバトルに負けそうになった時、一度そのことを忘れろ。大切なことがだんだんと見えてくる」
静かに、だけどはっきりと師匠は言った。
心を無にする…
大切なことが…見えてくる。

「それがハルカへの課題だ。もう遅い。早く寝なさい」
「はい」

師匠はそう言って、ジムへと帰って行った。
私は師匠に言われたことについて考えた。

「心を無…か」

そう言われている気がする。
私は…ポケモンと心を通わせるため、心を無にすることを頑張ろう。


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