12 瓜二つの私達

『ご乗船ありがとうございます。まもなく船はミナモへと到着します』

船内にアナウンスが響く。
私は甲板へと向かう。
甲板へ出ると、風が強かった。

「う…わ」

強く吹いているから髪がグチャグチャ。
最悪かも…
なんとか前を見ると、見慣れた土地の姿。
ホウエン地方、私の故郷。

「久しぶり…」

ポツリと一言こぼしていた。

船が港へ着いて、降りて。
久しぶりにホウエン地方へ帰ってきたことに、喜びを隠せない。
暖かい日差し。
海の匂い。
穏やかな風。
どれも懐かしい。
すごく嬉しい。

「えっと、ミナモデパートへ行かなくちゃ」

現在、9時40分。
歩いても間に合う。
私はミナモデパートへと歩き出した。


ピピピピピッ…
ちょうどミナモデパートへ着いた時、ポケナビが鳴った。
カナタかな?
履歴を見ると、やはりカナタだった。

「もしもし?」
『ハルカ!?私カナタだけど、ごめん、今ポロック屋がすごく忙しいの!10時に行けそうにないから、12時でいいかな!?』

そっか、ポロック屋さん忙しいんだ…
カナタの家はポロック屋さん。
優しいお母さんと、パートナーのブーピックと一緒にポロック屋の手伝いをしている。
元々私が用事を作ったのだし、カナタに迷惑をかけてしまった。
なら何時間でも待てる、と一人で納得した。

「ううん、大丈夫。私はミナモデパートを見ておくから」
『本当にごめんね…』
「謝らないで、カナタ。じゃあ12時ね」

電話を切り、ベンチに座る。
はぁっとため息をこぼした。
…本当は今すぐ話を聞いてほしかった。
この"キモチ"が、何なのか早く知りたい。
何でだろう…悲しい。
涙がでちゃう…
目尻に溜まっている涙を拭いて、私はデパートへと走った。
次の瞬間。


「きゃあ!?」
「うわ!?」


ドンッ
私は床に躓いてしまった。
いった〜…
曲がり角で誰かとぶつかってしまった。


「大丈夫ったいか?」


ぶつかってしまった人の手が、私に伸ばされる。
細くて、しっかりしている女の子の腕。
私はその子の手を取って立った。

「ありがとう…。ぶつかってごめんなさい」
「いや、こちらこそすまんち」

訛りがある喋り方だなぁと思い顔を上げると…時が止まった。



「えっ?」
「へっ?」



だって…私と"その子"の顔が……


「「えええええ〜〜〜〜〜!?!?!?」」


すごく、似ていたから。


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