10 ライバル

アサギシティでワカナに会って。
今ポケモンセンターにいる。
さらにワカナが泊る部屋にいる。
ワカナがここに案内してくれたのだ。

「ハルカさん、大丈夫ですか?」
「うん、ありがとうワカナ」

心配そうに私の顔を覗くワカナに私は少し微笑んだ。

「…何か悩みがあるのですか?」
「えっ?」

顔をゆっくり上げてみると、ワカナの真剣な顔が私を見つめていた。

「ハルカさん、いつもの元気がないじゃないですか。さっきだってぼーっとしていましたし。だから何か悩んでいるのかなって…。私でよかったら話を聞きますよ?」
「…ありがとう、ワカナ」

ワカナに微笑んで、お礼を言った。
……。
正直この話をワカナにしていいか、わからない。
私だって今思ったことだし…
なんで"シュウがライバル"なのが。
自分の中で少しずつ、壊れていくような気がする。
……だけど。
私は勇気を振り絞ってワカナに聞いてみた。


「ワカナはさ…」
「はい」
「シュウのことどう思っている?」
「え…」

あぁ、やっぱり…聞かない方がよかったのかな。
まるで私が"シュウのこと好き?"って聞いてる気がして。
………えっ?
好き?
何でここで"好き"が出てくるの?
どうして?
するとずっと黙っていたワカナが口を開いた。



「私はシュウ様のこと、恋愛感情で好きです」
「っ!!」

思わずワカナを見つめてしまった。
恋愛感情で…好き?
す…き…?

「あっ…そうなんだ」
「……ハルカさん」
「な、何?」


恐る恐るワカナを見ると、その表情は真剣そのもので。

「ハルカさんはどうなんですか?」
「え…」

私…?

「シュウ様のこと、好きなんですか?」
「っ」

その質問は…ユズリハ大会の時とほとんど同じで。
シュウのことが好きって。
私はシュウのこと…どう思っているんだろう。
わかんない。
…わかんない。
ずっと俯いたままの状態が続いてしまう。
どうしよう…
何か言わないといけないのに、言葉が見つからない。
すると沈黙を破ったのは…ワカナだった。


「私は、ハルカさんを尊敬しています。憧れなんです」
「えっ…」

そ、尊敬?あ、憧れ?
話が逸れた気がした。
だって今は"シュウのことが好き"かを話していたのに。
ワカナを思わず見てしまう。
ワカナは笑顔だけど、真剣な表情をしていた。
何かを決意したような、瞳で。

「それと…ハルカさんは、私のライバルです」
「ライバル…?」
「はい。いつか絶対に勝ちたい相手です。…シュウ様が唯一認める女の子っていうのもあるんですけどね」

少し苦笑いをしたワカナ。
私はというと…目をパチクリとしていた。
前にも、聞いたことがあるセリフ。
"シュウが唯一認める女の子"。
なんだか…恥ずかしい。
そんなこと、言われるなんて。
私の頬、絶対に赤い。

「今すぐに答えはいりません。ただ…考えておいて下さい。ハルカさんにとって、シュウ様はどんな存在なのかを」

そう言って、ワカナは立った。

「ワカナ?」
「少し外に出ておきます。夜風に当たりたいから」

そう言ってワカナは部屋を出て行った。
一方私はというと、

「…」

その場に座ったままで。
シュウは私にとって、どういう存在なのかな?
考え出すと止まらなくなってしまった。
夜になっても眠れなかった。
…シュウのことばかりが頭に浮かんできて。


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