7 胸の高鳴り

「ハルカ」

コンテスト会場を去ろうとポケモンセンターへ歩こうとした時。
誰かから声をかけられた。
この冷静で低い声は…

「シュウ?」
「コンテストお疲れ様」
「お、お互い様かも」

そう言い、シュウの顔から視線を外す。
なんでだろう。
シュウの顔が見れない。
いつから?
そうだ、あの時からだ。
心配そうに私を見つめていた、緑色の瞳。
それからシュウの顔を見るのは、久しぶりなのかもしれない。
今回は対戦しなかったのもあるんだけど。

「これからポケモンセンターに行くのかい?」

真剣な瞳で見つめられて言うシュウ。

「う、うん。泊るから」

…なぜかドキッとする。
シュウの顔を見ると。
それに…なんだかシュウがカッコよく見えてしまう。
何で…?

「じゃあ、一緒に行こう」
「え、えええええ!?!?!?」

う、嘘!?い、一緒に!?

「なんだい、僕がポケモンセンターに行ったらいけないのかい?」

あまりにも悲しそうな瞳で見つめられたから思わず、

「ち、ちち違うかも!!」

必死に否定した。

「まったく大声出して、美しくないね」

シュウはいつものように前髪を掻きあげて私に嫌みを言う。
だけど私は、いつもと違って…

「……っ」

嫌味を返せないでいた。
いいや、"返せなかった"んだ。
私、どうしっちゃったの…?



+*+*+*



「ジョーイさん、お願いします」
「はい、お預かりします」

ニコッと花が綻ぶように笑うジョーイさん。
本当に癒されるなぁ…
ジョーイさんにあいさつをし、外を見ていた。

「わぁ〜…もう暗くなっている」

ポケモンセンターの窓から暗くなった空を見る。
もうすぐ夕食の時間かも。
レストランに行こうかな。
少しお腹空いたし。

「ハルカ」

レストランに行こうと歩き出した時。
シュウに呼び止められた。
あの後結局。
私はシュウとポケモンセンターへ向かった。
今日のコンテストのこととか、ポケモンのコンディションなど他愛のない話をして。
いつものように話した。
…だけど少し違った。
なぜだかわからないけど、シュウの顔を見て話せなかった。
今日の私はおかしい。
自分でもわかるぐらい、本当におかしい。
そう思いながらも、私は「何?」と答えた。

「今からレストランに行くのかい?」
「ええ、そうよ」
「僕もいいかい?」
「えっ?」

シュウと夕食?
だ、大丈夫かな…?
今ずっとシュウの顔見れてないのに。

「うん!一緒に食べよう!」

だけど断る理由もなく、笑顔で答えた。



+*+*+*



「う〜ん…おいしすぎるかも!」

ミートスパゲッティを頬張る私に、

「すごい食欲だね…」

オムライスを食べるシュウの呆れた顔。

「だっておいしいんだもん!」
「そうだね」

フッと不敵に笑うシュウに。

「ッ///!」

どうしよう、顔が熱いのがわかっちゃう!
思わずフォークを落としてしまった。

「ハ、ハルカ?大丈夫かい?」
「だ、大丈夫…ッ」

シュウにフォークを拾ってもらって、視線を逸らした。
胸がドキンと鳴っている。
なんだろう…このキモチ。
それから私は勢いよくミートスパゲッティを平らげた。
呆れたシュウの顔なんてわからずに。



+*+*+*



夕食を食べ終えて、ロビーでシュウと二人でいた。

「ハルカは次どこに行くんだい?」
「アサギシティに行って、タンバシティに寄るつもりよ」
「じゃあ、僕と逆の方向だね」
「そうなの?」
「コガネシティに行くんだ」
「じゃあ、お別れね」

ズキンッ

……えっ?
今の音、何?

「じゃあ、また次のコンテストで」

私の戸惑いに気づいていないのだろう、シュウは自分の部屋に向かっていた。

「あ、シュウ」
「ん?」
「…次のコンテストで」
「あぁ」

ニコッと笑い、シュウも手を上げてくれた。
さっきと違って、胸はドキドキとしていた。


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