錬金少女の日常


「カマエルー、今日もお願いー!!」
「かしこまりました、お嬢様」

昼下がりのセントシュタイン城下町―リッカの宿屋のカウンターに置いてある不思議な釜の前に、錬金大好き少女ナマエがいた。
女神の果実集めの最中に、リッカの宿屋で見つかったのがこの喋る錬金釜こと"カマエル"。
ナマエはカマエルの錬金に興味を持ち、今では旅や宝の地図から帰ってきたらすぐカマエルの元へ直行し、採取したアイテムを即錬金する程興味を示している。

「あらあら、またナマエはカマエルの所に行ったのね」
「錬金にハマる前はすごく真面目だったのになー」
「錬金のことになると人が変わるからね…」

少し離れたテーブル席に、ナマエの仲間であるユイリ、アッシュ、トオイがカウンターの方に居るナマエを見て呟く。
彼らにとってナマエの行動は日常茶飯事であり、さほど気にしていない。
しかし錬金に興味を持つ前の彼女を知るからこそ、驚愕は強かった。

「いつからだっけ?ナマエのあの情熱振り」
「確か…ルディアノ城での事件後ね」
「それからの錬金への熱の入り様は凄かった」

トオイが悟った目で物事を振り返る。…余談だが彼は悟りのスキル100である。

ナマエの錬金熱は凄まじかった。ナマエ達の旅の目的は女神の果実を全て集めることだ。しかし時には、それをそっちのけでアイテム採取することが多くなった。
まず盗賊に転職し"ぬすむ"を覚え、魔物と戦闘中必ず"ぬすむ"を使ったり、錬金アイテムを採取しにルーラで転々と移動したり、そしてそれらを錬金する…と正に女神の果実そっちのけである。
そのおかげでサンディの怒りを買ったことも…。

「まあ天使のナマエには、錬金は珍しいものだったんじゃないか?」

アッシュの呟きにユイリとトオイは"そうだね"と頷く。
確かに天使界には、錬金というものは無いだろう。だからこそ、ナマエは錬金に惹かれていったのかもしれない。
カウンターで楽しそうに笑う我らがリーダーに、三人は微笑みを浮かべた。



その頃ナマエは…

「ねーねー、聞いてよカマエルー」
「どうかなさいましたか、お嬢様?」

ナマエの不満気な声に、カマエルははてなマークを浮かべる(様に見える)。
今日の錬金は成功しており、好調だ。出来上がりの武器防具道具一つも欠けたりしていない。先程の「ありがとうカマエル!!」とナマエ満面の笑顔でお礼を言われ自身の釜を撫でてくれた。それなのに何故、ナマエは不機嫌なのだろうか。

「実はね、今さっき皆と宝の地図に行って来たんだ」
「ほう、それで?」

宝の地図には、地上では見かけない魔物も出現する。そしてまた、珍しいアイテムが入っている青い宝箱がある為、ナマエ達はよく宝の地図へ潜る。
何か良いアイテムが手に入らなかったのだろうか?…とカマエルが思考していると。

「今回ね…また!メタスラの剣だったの!!」
「おやおや、またですか…」
「そうなの!もうこれで何個目なのかしら!?」

あぅぅ…と顔を埋めるナマエに、やっぱり…と確信を得たカマエル。
先程の会話に出た武器の名前は"メタスラの剣"。メタル系の魔物に有効な武器の一つである。これを錬金すると"はぐれメタルの剣"、さらに錬金すると"メタルキングの剣"になる。
勿論ナマエは全部の剣を持っている。持っているのだが…

「メタスラ三本はぐれメタル三本メタルキング三本って………何でこんなにも剣が多いのよー!!!」
「おおおおお嬢様!!落ち着いて下さいませ!!」
「どうしたの、ナマエ!?」
「何があったんだ!?」
「大丈夫ですか!?」

カウンターで叫ぶナマエに、何事かと駆け寄るユイリ、アッシュ、トオイ。

「落ち着いていられないよー!!はぁ…私が欲しいのはメタスラの槍なのに…」

欲しい武器が手に入らないショックなのか、ナマエの顔色は青白い。

「でもナマエ、メタスラの槍一本持ってんじゃん」
「アッシュ甘い!!一本だけだからこそ、錬金出来ないじゃない!!」
「ナマエは変わったこだわりがあるからね…」

そのナマエのこだわりというのは、メタル系の武器なら"メタスラ""はぐれメタル""メタルキング"それぞれ一つずつ欲しいというものである。
メタスラの槍一本ではぐれメタルの槍、メタルキングの槍に錬金するのは、ナマエにとってタブーなのだ。ちなみに他の武器防具も一緒である。

「うぅ…メタスラの槍…」
「……よしナマエ、今から宝の地図潜るわよ」
「へっ?」
「「はぁっ!?」」

突然のユイリの発言に、ナマエはポカンとし、アッシュとトオイは驚きを隠せず大声が出た。

「ちょっとユイリ、僕ら今さっき帰って来たばかりだよ?」
「メタスラの槍を追い続けるナマエの為なら直ぐにでも行ってやろうじゃない」
「俺もさんせーい!ついでにレベル上げようぜ!!」
「ユイリ…ありがとう!!」

傍にいるユイリにナマエは抱き着き、ユイリもしっかり抱き締め返す。
……ユイリはナマエに甘い。本当の妹の様に甘やかす。
アッシュはまだ戦闘不足で、まだかまだかと浮き足立っている。

「…仕方ないなぁ」

個性いっぱいな仲間だけれど、この仲間だからこそ楽しいんだなとトオイは心の中で思った。


「それじゃあ、出発進行ー!!」


今日も、ナマエ達の旅は続く。


*+*+*+
初のDQ9小説です。…なんかもっとギャグっぽく書きたかったんですけど…どうでしょうか?;
DQ9は、DQ3以来のオリジナルキャラクターを作れますよね(私はDQ3未プレイです;)。だから小説も完全オリジナルキャラクター。だからこそ書くのが難しいのもあります。でもとても楽しいです^^
今度はもっとグダグダにギャグっぽくしたいと思います(笑)
ちなみに、メタル系の剣は実話ですよ(笑)


(20140417)




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