夏の風物詩(サトリラ)
緑色に、黒縦模様を添える球体を二つに割ると、そこには赤色に黒の粒々を持つ果実が現れる。
それは、夏の風物詩と呼ばれる程好まれる―カイスの実。
その実はとてもみずみずしく、口に広がる甘味は暑いことを忘れさせる。
そんなカイスの実を使って、"あること"をサトシとリラは暑い炎天下の中、カイスの実を冷やし準備を進めていた。
それは…―
「…よしっ。これでいい、サトシ?」
「ありがとう、リラ。大丈夫だぜ!」
サトシの瞳にタオルを巻き、それを後頭部で見えないように軽く結ぶ。
そしてサトシの手には、約1m程の木製の棒。
「絶対割るぞー!!」
その場で棒を懸命に振るサトシは、やる気満々で。
思わず笑みが零れてしまう。
「フフッ、頑張れサトシー」
「ピカピー!」
「フィー」
ピカチュウとエーフィも楽しそうに声援を送る。
少し離れた場所にカイスが置かれ、早く早くと待ち望んでいる。
それに応えるように、ゆっくりとサトシは近付いてゆく。
「サトシ、ちょっと右ー」
「こうかー?」
「あっ、行き過ぎ!今度は少し左」
「ピカ、ピカチュウー」
「エーッフィ」
思うように進まない時は、ボク達が方向を教える。
そうやっていると…―
「…あっ、そこ!目の前だよ!!」
「ここだな!?…よし、いくぜ―――!!」
ピタリとカイスの目の前で止まり、サトシは勢いよく棒を振り上げ…―
グシャ!
カイスを叩き割った。
「成功か!?」
「うん、ぴったりだよ!」
「ピッカ〜!!」
「フィーッ」
タオルを取り見ると、そこには少し歪だが見事に割れたカイスの実。
カイスの赤い果汁が、食欲をそそる。
「よし、じゃあ食べるか!!」
「そうだね」
「ピッカ!!」
「フィー」
割れたカイスを一口頬張る。それはとても甘く、暑さを吹き飛ばしてくれた。
―それは、ある夏の楽しい日。
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ありがとうございました。