無自覚ヤキモチ(サトリラ)
久しぶりに、会いたくなった。
以前挑戦者として挑んだバトルタワーのフロンティアブレーン―タワータイクーンの、リラに。
それなら驚かせようと、連絡も入れずにバトルタワーへと俺は歩き出した。
*+*+*+
「…あっ!」
バトルタワー付近の森を歩いていると、久しぶりに見た、彼女の姿。
綺麗で繊細な藤色のくせっ毛の髪を持つ、リラの姿。
俺が隠し通せるのはやっぱり無理だな、と諦めてリラの名前を呼ぼうとした。
「おーい、リ…ラ」
元気に彼女の名前を呼ぶことが、出来なかった。
―俺の知らない男が、リラと仲良さそうに話し合ってるからだ。
その男の容姿は、リラより少し背が高く、茶髪で俺より年上の印象だ。
その男の顔は見えない。ただ俺には、リラの笑った顔しか見えない。
―なんだよ、これ。
なんでこんなにも、苛つくんだ。
この苛つく理由を俺は知らないし、抱いたこともない。
なぁ、なんなんだよ。
なんか俺、おかしい。
―いつの間にか俺は、リラとその男の間に無理やり入って、リラの腕を引っ張っていた。
「えっ…ちょ、サト…」
「おい、君…」
二人の声なんて極力聞こえないように、俺はリラを連れて走り出した。
*+*+*+
「ちょっと、サトシ…!!」
リラの叫ぶ声が、ちょうど真後ろから聞こえる。
それでも俺は、その声に反応しない。
…いいや、反応出来ない。
リラにどう接すればいいのか、わからない。
「サトシ!!!」
もう一度俺の名前を叫ぶリラの声の大きさに、ハッと我に返る。
急いで後方を振り向くと、怯えているようで、哀しそうなリラの顔。
―胸がちくりと残酷にも鳴り響いた。
どうしよう…俺のせいで、リラを傷つけた。
どうすればいいんだ…なんなんだよ、この苛立ちは…っ。
「ごめん…リラ…」
ゆっくりとリラの細い腕を離す。俺は今、リラの顔を見れない。見られない。
何故だかわからないけど、リラがあの男と仲良さそうに話していたことに、苛立ちを隠せない。
「サトシ…どうしたの…?」
そう思考していると、リラの元気のない、虚しい声が、静かで苦しい空間にはっきりと響いた。
「あの人…誰?」
俺の冷酷で低すぎる声に、自分でも驚いた。
それはリラも同じようで。
「あの人…?」
「今さっき、一緒にいた人」
「あ…あぁ、あの人はね、バトルタワーに挑戦して来た人だよ」
「バトルタワーに?」
「うん。そうだよ」
まぁ、ボクが勝ったけどね。と付け足したリラの言葉。
それでも俺の心は、晴れない。
「あの人と、何喋っていたんだ?」
「えっと…"また挑戦しに来ます"ってあの人が言ったんだよ。それにボクは"もちろんです"って言ったんだよ。それからちょっと世間話を話していた」
「―…だ」
「…えっ?」
"何て言ったの?"とリラが言おうとする前に、俺は―。
「サ…サササササトシ!?」
―いつの間にか、リラを抱き締めていた。
リラの驚いた声を、気にせずに。
「リラが俺以外の男と話すの、嫌だ」
今正直の気持ちを、そう告げた。
何故か苛ついてしまうんだ、俺以外の男と話しているリラの姿を見ると。
そう告げてリラを見つめると…
「…リラ?」
リラの顔が林檎のように、真っ赤に染まっていて俯いていた。
「リ、リラ!?大丈夫か!?」
「サ…サトシ」
「えっ、何…?」
何を言われるんだ?と思っていると、
「もしかして…ヤキモチ妬いてる?」
「―へっ?」
ヤキモチ?
ヤキモチって…
「何だ、それ?」
「え…えぇぇぇぇえ!?ヤキモチ知らないの!?」
「悪い…わからねぇ…;」
「あ…あはは;」
お互い苦笑いをする。
すると、リラはフッと微笑んで。
「サトシがボクに、今さっき言ったようなこと…だよ」
「 ! 」
だけどまた顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに顔を隠すリラ。
それになんだか俺も、顔が熱帯びて赤くなって。
「そ、そういうことなんだな…ヤキモチって…」
「う、うん…」
お互い顔を赤くして、なかなか見れない。
…だけど。
不思議と心が落ち着いた。
そうか、俺はあの人にヤキモチ妬いてたんだ。
リラと仲良さそうに話していた、あの人に。
俺はきっと―…
「リラの隣にいたいってことなんだろうな」
「えっ?何か言った、サトシ?」
「いや、何でもないぜ」
「そう?」
「あぁ」
ボソッと呟いた言葉を、何とか誤魔化した。
きっと、リラの隣にいたいから、あんなに苛ついていたんだな。
だから―…
「好き…なの、かな」
その小さな呟きは、サトシの肩に乗っていたピカチュウしか聞こえてなくて。
ピカチュウは自分の相棒で親友のサトシの恋に、"応援するからね"と言うように、サトシの頬を優しく擦った。
*+*+*+
ヤキモチ妬くサトシを書いてみたい!!と思った結果がこれですよ…orz
最初ちょっとシリアス…ですかね!?
シリアス書くの、勉強しなきゃ!!
ここまで読んで下さり、ありがとうございましたm(_ _)m
(2013/5/19)