甘い恋の味(サトリラ)


「いやー、ごめんなリラ。連絡無しに訪れて」
「ううん、気にしないで」
「ピカピ」
「フィー」

リビングに備えているソファーに、彼の向かい合わせのソファーに座るボク。
今日バトルタワーが休みなので、家でゆっくり過ごそうかと思っている途中に、インターホンが家中に響いた。
誰だろう…?と思いながらゆっくりドアの扉を開いてみると、そこには、懐かしい人物が立っていた。
前にバトルタワーに挑戦者として来たボクと同じ歳位の男の子、―サトシだ。
勿論、彼の相棒のピカチュウも一緒で。
突然の家訪問に驚いたけど、ボクはすごく嬉しかった。


―…好きな人が自分の所に来てくれた。これ程嬉しいことはない。


ピカチュウとエーフィに、ポケモンフーズが入ったお皿を渡してそう思った。
…あっ、そういえば。

「サトシ、お腹空いたでしょ?今お茶を出すからね」
「えっ!?い、いいよ!!俺が勝手に来たのに…」
「いいんだよ。お客様は遠慮しなくていいの」

申し訳なさそうに言うサトシに、ボクは首を横に振る。
色々と考え込んでいたので、肝心のお客様にお茶も出していなかった。
確か以前サトシ達に出した紅茶はアールグレイだったな…と思い出しながら準備をし始めた。
紅茶の茶葉をティーセットに入れる際、茶葉の香りがする。
コポコポコポ…とティーセットにお湯を入れると、さらに茶葉の香りが広がった。



*+*+*+

「はい、どうぞ」
「悪ぃ。ありがとな」

あははと頭を掻きながらお礼を言うサトシに、ボクはクスッと笑った。
テーブルにさっき入れた紅茶をゆっくり置く。
…と、それと同時に。


「わぁ…!!」


サトシの感嘆の声が響く。
まるで、宝物を見つけてはしゃぐ子供のように輝く瞳で、"それ"を見つめて。

「これ、リラが作ったのか!?」
「うん。昨日にね」

サトシが言った"これ"というのは、ボクが作ったゼリーのこと。
容器から取り出したゼリーが、お皿の上でぷるるんと動く。
ふいにゼリーが作りたくなり、材料も揃っていたので、昨日作ったのだ。
レシピ通りに順調に作り、三個のゼリーが出来た。
一個はマサさんの分で、もう一個はボクの分。
最後の一個が残るなー…ボクがもう一個食べようかなー…と考えていた。
そして今日、サトシが来てくれたので、ラストのゼリーに救いの手がやってきたということ。
安心したが、それと同時に不安が襲い掛かる。

だって…ボクの手作りのお菓子―食べ物をサトシにあげる。つまり…サトシはそれを食べる。

料理は苦手ではないけれど…緊張してしまう。


―好きな人に何かを贈ることだけで、こんなにもドキドキするなんて(不安で仕方がないことも含めて)。


「じゃあ、いただきまーす!!」


と、言ったサトシの声が聞こえた気がした。
……………へっ?

「あっ、ちょ、まっ…」

"まって"と言おうといたが、既に遅し。
スプーンですくい上げたゼリーが、サトシの口の中へと…入った。


ど…どどどどどうしよう!!!


あぁ…味見用に少し、小さな容器に入れておけばよかった…っ。
なんて考えても、あとの祭り。
サトシはもう、ボクが作ったゼリーを食べたから。
………不味かったかな。
もう今はネガティブ思考にしかなれな…


「リラ!!」
「はいぃぃぃ!?」


やばい、変な声が出てしまった。
恥ずかしい…
顔が赤くなったボクを見つめながら、サトシは―

「このゼリー、すっげー美味いぞ!!」
「………へ」

今度は間抜けた声が出てしまった。
今、サトシは…何て?
『美味い』?
『不味い』じゃなくて?
ポカンとサトシを見つめることしか出来なくて。
ボクの視線に気が付いたのか、サトシはボクを見つめて―


「リラが作ったゼリー、美味しいぜ!!」
「!!」


―とびきりの眩しい笑顔でそう言った。


ボクの好きな…笑顔で。

「ほ、ほんとに?」
「あぁ!ほんとだぜ!」

"こんな美味いの作れてすげーな!"とサトシはつけ足して言ってくれた。
…どうしよう。
すごく、嬉しい。
時々作るお菓子など、エニシダさんやマサさんに"美味しい"って言ってくれたことも、もちろん嬉しかったけど。


―好きな人に"美味しい"って言ってくれた。それだけでこんなにも違うだなんて。


「ほら、リラも食べろうぜ!」
「…うん!」

ゼリーをスプーンですくって口に入れる。…美味しい。
自意識過剰だけど、…上手く出来たかも。

「よかった…失敗しなくて」
「リラでも失敗したりするのか?」
「もちろん。一発で上手く出来た物なんて、数えられる数しかないよ?」
「それでもすごいぜ!成功してよかったな!」
「フフッ、ありがとう」

こんな他愛な会話でも、すごく楽しい。


―今日サトシが来てくれて、本当によかった。


サトシを見つめながらそう思っていると、サトシもボクの視線に気が付いたみたいで、ポカンとボクを見つめた。

「ん?俺の顔になんかついてるのか?」
「ううん、何にもついていないよ」

クスッと笑って答えると、サトシは"もしかしたら"!と瞳を輝かせて、何かをひらめいたらしい。
何を言うのかな?と紅茶を飲みながらサトシに視線を向けると…


「俺のゼリーが欲しいのか!」
「………はい?」


予想外の答えに、ボクは少し唖然としてしまった。
紅茶を吹き出しそうになっちゃったけど、なんとか我慢。ギリギリセーフ。
サトシに差し出したゼリーを、ボクが食べたそうに見ていた?
サトシから見たボクは、そう見えていたということなのかな、これって。
………なんというか、サトシらしいな。と感じた。

「いや、そうじゃな…」
「はい!」
「…えっ?」

"そうじゃないよ"と言おうとした時、ボクの口の前にスプーンですくったゼリーがある。

「えっ、サトシ?」
「一口あげるぜ!」


―これってもしかして…


「い、いやいや!いい―むぐっ!?」


"いいよ"と断ろうとした最中に、いきなりスプーンを口の中に押しつけられた。
思わずサトシを見ると、悪戯が成功したようにニヤリと口角が上がっていた。


―いや、ちょっと待って。


今サトシ、ボクに何した?
・サトシが使っていたスプーンで、サトシのゼリーをボクが食べた。
……………はぃ?
先程起こったことが、未だに信じられない。いや、絶対信じられない。
だって、その…っ。
あぁ、思い出すだけで恥ずかしくなる!!///

「ってことで!リラも俺に一口ちょーだい!!」
「えぇぇぇぇっ!?」
「いいじゃん、俺の分リラにあげたし!!」
「いや、あの…っ」
「もちろん、リラもさっきの俺のようにやってくれよな?」
「!?!?!?///」

今日のサトシ、サトシじゃないと思うのは、ボクだけじゃないと思う。
サトシは鈍感と思っていたけれど…どうなんですか、誰か答えて下さい。


―その後、ボクはサトシにゼリーをあげるのに緊張と恥ずかしさで胸がドキドキと鳴りまくってうるさかった。


*+*+*+



あれ…これを書くきっかけがですね、
"はい、あーん"って二次元でも三次元でもヤバいよね←と萌えた結果がその…この恥ずかしい小説となったのです…///
…なんだろう。恥ずかし過ぎてヤバい。
消す確率高すぎる。

サトシとリラちゃんのキャラ、違いますよね!?
意外に確信犯なサトシ好きかもしれません←

ここまで読んで下さり、ありがとうございましたm(__)m


(2013/4/16)








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